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進化した日本的経営”なぜ人を大切にすると利益が上がるのか?” ~ありえないレベルで人を大切にしたら、24年連続黒字になった仕組み~

開催日:2018年5月9日(水)15:00-17:00
共同主催:富士ゼロックス株式会社 関西東海支社、富士ゼロックス愛知株式会社
協賛:富士ゼロックス総合教育研究所

(FUJI XEROX Executive Seminarでの講演より採録・構成)

目次

講師プロフィール

近藤会長の画像
近藤宜之氏

株式会社日本レ一ザー 代表取締役会長

1944年生まれ。慶應義塾大学工学部電気工学科卒業後、日本電子株式会社入社。1989年、取締役米国支配人就任。1993年、取締役国内営業担当などを経て、1994年、子会社の株式会社日本レ一ザー代表取締役社長に就任。2007年、ファンドを入れずに役員・正社員・嘱託職員が株主となる日本初の「MEBO」を実施。親会社から完全独立、日本では例のないCo-owned Businessとなる。2018年、代表取締役会長に就任。
2011年、第1回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の「中小企業庁長官賞」、2015年、キャリア支援企業厚生労働大臣表彰、2017年ホワイト企業大賞 など、経済産業省、厚生労働省などから受賞多数。著書に「ありえないレベルで人を大切にしたら23年連続黒字になった仕組み」(ダイヤモンド社、2017年)、「ビジネスマンの君に伝えたい40のこと」(あさ出版、2012年)など多数。

会社は何のために存在するのか

会社は何のために存在するのでしょうか。一般的には儲けること、新しいものを生み出すこと、創造と開発、社会貢献などさまざま挙げられますが、私は方向性として二つあると思います。一つは「お金」や「市場」にフォーカスするか、もう一つは働く「人」にフォーカスするかです。企業の多くはお金や市場にフォーカスし、「人」は材料や手段と考えます。だから、業績が悪化すると「人」を切ってリストラをする。これは良くない習慣です。

私にとって企業の定義とは、働く人と家族を幸せにすることです。「冗談じゃない、そんな経営ができるのか」と思う人もいるでしょう。しかし、人生において働いている時間というのは圧倒的に長いわけです。その働く時間が幸せでなければ、人は何のために働くのかと疑問に思うはず。私は働くことで得られる喜びを提供するのが企業の役割だと考えます。

では、働くことで得られる喜びとは何でしょうか。一つは周りから必要とされること、周りの役に立つこと、その結果として周りから感謝されること。この3つの喜びが働くモチベーションになるのです。もう一つ、会社の存在意義は人を雇用し、成長させることです。そのために、企業は社員にとっての自己実現の舞台を提供しなければなりません。このような企業の定義をすると、利益は目的ではなく、良い会社になるための手段や条件であると考えられます。

その一方で、私は、赤字は経営者にとって犯罪行為であると考えています。なぜなら、赤字になると雇用不安の空気を醸成するからです。そして利益を出すからこそ、社員に待遇と成長のチャンスを与えることができる。また、企業は社会の公器ですから、利益を出して税金を支払わなければなりません。

ここで問われてくるのが、社員の当事者意識です。圧倒的なリーダーシップを持つ経営者のもとでは、指示待ち族社員が出てくるのは必然となります。なぜなら、上が言う通りにやっていれば間違いないと考えるからです。社員を大切にすることは、甘やかすことではありません。社員に考えさせることが必要なのです。

また、危機意識を共有することも重要です。日本レーザーは25年間黒字を続けていますが、そのことが逆に危機意識を薄めてしまうという側面もある。だからこそ、経営者が危機意識を醸成する必要があるのです。私は日本レーザーが銀行に見放され、破綻寸前だった過去を繰り返し話すようにしています。どんな企業も未来永劫安全ということはないし、困ったときにはどこも助けてくれない。健全な危機意識が会社を成長させる工夫と努力を生むのです。そのために、社員のモチベーションを高く維持することがリーダーである社長が負うべき責任だと考えます。

社員の成長を支える仕組み

では、社員のモチベーションを維持し、成長を支える仕組みとは どのようなものか。一言でいうと、「頑張ったら報われる人事制度」 にすることです。

今、ダイバーシティ経営が叫ばれていますが、残念ながら多くの日本の企業では女性や高齢者を上手に活用する仕組みができていません。これから10年以内に日本は500万人の労働力が不足すると言われています。まず新卒一括採用、年功序列、学歴優遇/年次優遇といった制度を改めるべきです。国籍・性別・学歴・年齢を問わない多様性、個々のライフスタイルに応じた柔軟な雇用制度、能力・貢献度に応じた待遇など、フレキシブルな仕組みに変えていかないといけません。

このとき重要なのが、透明性と納得性です。100社あれば100通りの能力主義、業績主義があります。いかに透明性と納得性の高い人事制度を構築できるかが鍵となります。

日本レーザーでは、英語力、PC/IT運用・活用能力、対人関係対応能力を社員の基礎力として位置づけています。そして、この3つの基礎力を毎年1回、4月に見直して給与の増減を決めています。たとえば、英語力はTOEIC 500点を正社員の条件としており、それをクリアできれば5,000円、以降100点あがるごとに5,000円ずつ手当てが加算され、900点以上で25,000円の手当がつきます。同じように、業務上必要なPC/IT能力や対人関係対応能力についても、5段階評価で4,000~20,000円の手当を加算するようになっています。

ところで対人関係対応能力というのは、能力なのかと思う向きもあるかもしれません。日本レーザーでは、明るく挨拶ができること、他人を慮る気持ちがあること、おかげさまという感謝の気持ちを持つことなどを能力の一つとして評価の対象にしています。なぜなら、これらは性格ではなく、努力すれば身につけられる態度能力だからです。

また、会社の経営者は、社員に対してどういう働き方をして欲しいのかを明示する責任があります。日本レーザーでは働き方の契約書として、望ましい社員の姿を明示した「クレド」を毎日唱和し、潜在意識へ染みこませるようにしています。

やる気を伸ばす組織風土

社員のやる気を伸ばすには、風土を変えることも大切です。それは、社員が会社から大切にされているという実感を持てる風土を作るということです。企業において顧客満足を重視するのは当然ですが、私は社員満足があって初めて顧客満足が成り立つと考えています。社員満足がなければ、やらされ感、犠牲感が先に立ち、自身の仕事や提供する商品・サービスに誇りと自信が持てなくなってしまいます。その結果、何が起こったか。賞味期限の偽装やリコール隠し、無資格検査といった不正です。企業の持続的な経営を支えるためには、顧客満足の前に社員満足を大切にすることが不可欠なのです。

もう一つ、モチベーションを維持するために大切なことがあります。一般的に組織の構成比は、上位20%、中位60%、下位20%という2-6-2の法則で分かれると言われています。実際に日本レーザーでも、受注の実績やTOEICスコアなどを見ると、だいたい2-6-2の比率となっています。ここで企業の人事がやってはいけないことは、貢献度が低いという理由で下位20%を切ってしまうことです。なぜか。下位の社員を切ると、上位や中位の社員が下に落ちることになる。そうすると、次は自分が切られるのではないかという不安が広がります。安心して働けなくなるし、転職を考える人も出てくるでしょう。つまり、全体としてモチベーションが下がるわけです。

誰もがガンや病気、親の介護といったリスクを抱えています。強者もいつかは弱者になるのです。日本レーザーではガンを患った社員でも、病気を理由に肩をたたくことはありません。雇用が守られる安心感があるからこそ、社員が一生懸命働いてくれるというのが私の信念だからです。

社長が変われば会社は変わる

私は幸運・好循環を呼び込む5つの条件として、「笑顔、感謝、成長、利他、必然」があると考えています。この世に生まれ成長できる機会に感謝し、利他の気持ちで働く、そして周りで起こることは必然と受け止める。これは企業経営において何度も崖っぷちに立たされた経験から私が体得したことです。昔は傲慢で他責だった私が、経営を通じて自分を成長させることができたのです。

リーダーシップにはさまざまな考え方がありますが、社長が変われば会社も変わります。私は嫌なことはニコニコとして聞く、もっと嫌なことはもっとニコニコして聞く、ということを実践しています。日々の経営は社長にとって修業の場です。最後に孤独なリーダーへの言葉として「今ここを大事にせよと桜さく」-今ここで自分がやらなくて、いつ誰がやるのかということをお伝えしたいと思います。

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