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経営人材候補の発掘は、どこまで進化しているか~世界&日本のトレンド・最前線~

開催日:2017年11月13日(水)14:00~16:30
主催:株式会社富士ゼロックス総合教育研究所

【第一部】シニアエグゼクティブの発掘 ~間違ったやり方をしていないか~

講演者プロフィール

米ホーガン アセスメント システムズ社 パートナー コンサルティング部門バイスプレジデント
Scott Gregory(スコット・グレゴリー)

ホーガン社設立者であるBob Hogan&Joyce Hoganより博士課程から直接薫陶を受け、グローバルコンサルティング会社でのコンサルティング活動、 12年にわたるPentair 社でのタレントマネジメント、ODの経営役員を経て、現在ホーガン社共同経営者。コンサルティング部門の責任者として役員層セレクションや開発、及び後継者育成を専門とし、北米、南米、豪、アジア、欧州で活動。Fortune100の半数以上の企業の組織コンサルティングに従事。6000人以上の役員層のコーチングに携わる。Journal of Business and Psychologyでの執筆、 Bob Hoganとの共著 The Handbook of Personality Psychology。講演多数

経営を担える人材の早期発掘と育成が多くの企業において喫緊の課題でありながら、求められるリーダーシップの定義やそれを測る方法論の決定打がないまま、各社とも模索が続いています。世界有数の企業の組織開発、役員層のセレクション、開発、後継者育成に広く携わってきたホーガン社コンサルティング部門バイスプレジデントが、コンサルティングの現場よりパーソナリティアセスメントを活用した経営候補人材発掘を考察します。

リーダーシップの危機

シニアエグゼクティブをいかに発掘するか。米国のみならず世界各国の企業が長きに渡って、この課題に取り組んでいます。なぜそれが重要なテーマであるかということを浮き彫りにするデータをいくつか紹介しましょう。

米ギャラップ社の調査によると、常に高い意欲を持つエグゼクティブの割合は30%に留まり、30~60%のリーダーは意欲が高いものの破壊的行動を取っていることが報告されています。そして従業員の82%が自分の上司を信頼しておらず、50%以上は直属の上司が理由で仕事を辞めたと回答しています。さらにエグゼクティブ選びで失敗したときの損失コストは100万~300万ドルになると推計されています。これらの数字はリーダーシップの危機を示しています。

さらに過去20年間においてエグゼクティブとして失敗する率は75%にも及ぶと推計されています。そしてこうした失敗の3~4割がエグゼクティブへの登用から18ヶ月以内に起こっています。

一方、ダイバーシティに関するデータを公開しているフォーチュン500のうち16社は、シニアエグゼクティブの80%が男性です。なぜ女性のエグゼクティブはたった20%なのか。これは優れた人材の採用可能性を逸しているといえないでしょうか。さらに大企業にありがちなのが、リーダーや組織のトップに立つ人は業績ではなく政治的な駆け引きによって選ばれていることが多いという現実です。

なぜ、エグゼクティブ選びに失敗するのか。私は三つの要因があると考えます。一つ目はリーダーシップとは何かという定義が明確でないこと。二つ目はリーダーシップを測るために何を測定すればいいかが不明確なこと。そして三つ目は社内に根付いた人選上の習慣が、エグゼクティブ選びにおいて正当な評価や判断を阻害していることです。

リーダーシップとは何か

リーダーシップの定義には二通りの考え方があります。一つは「職位の観点から」の定義です。すなわち、リーダーは個々人の特質によってではなく、職位や役割によって定められるというものです。そしてリーダーシップとは職位に付与される権限であるという捉え方をしています。それに対して私たちホーガン社が強調するのは、「進化の観点から」の定義です。古来、人間は集団で生活してきました。集団にはヒエラルキーが存在します。同時に集団としてのまとまりがなければなりません。

そうした集団の結束力と方向性のバランスを取るためにリーダーが存在する、というのが進化の観点からの定義です。つまり、リーダーシップとは集団にとっての資産なのです。

ところでリーダーシップに関連する問題として、私たちはカリスマ性のあるリーダーに惹きつけられる傾向があります。またカリスマ性が高いことが良いリーダーの条件と捉える向きもあります。しかし、カリスマ性が行き過ぎるとリーダーシップが劣ることにもなりかねません。というのは、リーダーシップにはレジリエンス(苦難に対する回復力)が重要であり、そのバランスがとれないとチームのパフォーマンスが悪くなるからです。

シニアエグゼクティブ選びにおける現状の課題

シニアレベルの人を採用するとき、企業が何をしがちであるかについて話します。まずほとんどの企業が人材斡旋会社に任せ過ぎている向きがあります。またカリスマ性に過度に重きを置く傾向も見られます。つまり、リーダーとして存在感があるように見える人を選んでしまいがちだということです。

さらに外部候補者よりも社内候補者に対して弱みを過剰に評価する傾向があります。なぜなら、よく知っている人の弱みは目につくからです。面接では弱みや破壊的行動につながるダークサイドの側面はあまり表に出ません。そのため、外部候補者の方が優秀に見えたりします。

そして前任者からの修正を過剰に行おうとする傾向があります。たとえば前のリーダーに革新性が足りなかった場合、起業家精神を持つ創造的な人を雇おうとして行きすぎてしまうということです。またコンピテシーリストを作成するものの、適切に能力を測定していないということも見受けられます。

スタンフォード大学の研究によると、役員は将来悪化するリスクを軽減しようという観点から、後継者育成や発掘を検討する傾向があります。つまり、リスクの抑制や緩和に軸足を置いてしまい、成功のために重要な資質を持ったリーダーを選ぶことが軽視される可能性があるわけです。また取締役会、経営陣、人事部などが協力して後継者育成に取り組むべきだと考えているにもかかわらず、現実はそこが上手く仕組み化されていません。

何を測定するのか

産業心理学の専門家ジョージ・P・ホレンベックによるエグゼクティブ選びの一般的なアプローチを紹介します。最初に見るのはコンピテンシー、次に能力やパフォーマンス、最後にキャラクター、つまり特質に着目します。それに対して私たちが望ましいと考える方法は、その逆の順序で見ていくことです。

つまり、この人はリーダーになったとき何をもたらすか、どんなチームを組織し方向性を打ち出すか、という特質から見ていくのです。そして二番目に今までの実績、最後に一連のスキルという順で測定対象に目を向けます。

また、私たちはリーダーシップに必要な特質として4つの原則を定義しました。それは誠実さ《人から信頼されること》、能力《市場や事業、顧客について習熟していること》、ビジョン《戦略の方向性を明確に説明できること》、優れた判断《賢い意思決定をし、過去から学ぶこと》です。これらが競争力のあるチームを作り、導いていくために最も本質的に重要な要素と考えます。

ではこれらをどう測定するか。私たちはFFM(性格特性5因子モデル)を使います。というのは、パーソナリティ測定というのは文化・人種・性別に関係なく健全で一貫性のある測定ができるからです。FFMによって意思決定、コミュニケーションスタイル、リーダーシップの傾向、価値観、リーダーシップの成功に対する阻害要因のリスクなどの情報が得られます。これによりバランスのとれた人材プールを構築することができます。

パーソナリティとリーダーシップ

パーソナリティ測定を使うと、リーダーシップ能力を適切に予測することができます。たとえばリーダーシップの判断材料として頭の良さを重視する傾向がありますが、メタ分析を行うとIQ評価に比べてパーソナリティ測定の方が2倍も有効だということがわかりました。

パーソナリティ測定は偏見を持たないため、すべての候補者に対して公平な測定ができます。またリーダーシップの成功を予測する確度も高いという利点があります。

これは重要なポイントの一つですが、マネジャーのパーソナリティは直接部下の意欲に影響を及ぼします。マネジャーの意欲が高いと高い業績が期待でき、その逆だと低い業績が予測されるわけです。人は退職をするとき会社から去るのではなく、直属の上司から去るのです。

それほどリーダーのパーソナリティというのは、組織や会社の成功に対して大きな影響を与えるということです。

私たちはパーソナリティの測定に焦点を当て、多くのリサーチを行ってきました。最後にシニアエグゼクティブを有効に選択するために付け加えておきたいことが一つあります。それは、シニアエグゼクティブの役割とその背景との適合性です。たとえば、CEOの価値観や仕事のスタイル、チームとのコミュニケーションといったものと合うかどうか。あるいはその組織は成熟企業なのかスタートアップなのか、顧客や競合などの市場状況はどうなのか。そうしたことも含めて、シニアエグゼクティブとしての適合性を十分に評価し、全体像を見極めていくことが重要だと思います。

【第二部】客観的アセスメントから自社の優秀人材を発掘するために ~コンサルティングの現場から~

講演者プロフィール

株式会社富士ゼロックス総合教育研究所 シニアコンサルタント 平野 重成

大手精密機器メーカーにて営業企画室、事業部人事の経験を経て、2007年富士ゼロックス総合教育研究所に入社。富士ゼロックス向け人事研修の開発や講師を務め、2009年より2015年にかけて富士ゼロックス(株)人事部に出向し、同社の人事制度設計・運用、人材育成体系・研修設計に従事。その後、富士ゼロックス総合教育研究所に復帰し、人事・人材開発を主としたコンサルティング業務に従事し、現在に至る。人事制度設計、次世代リーダー選抜・育成体系設計、能力開発指標/コンピテンシー設計を専門とする。

2014年に当社がホーガン アセスメントを日本国内で提供を開始してから3年が経過し、すでに5,700人以上の方に受検いただきました。多数のお客様の課題に向き合い、解決のお手伝いをする中で、特にご相談が多かったのは「自社の次世代経営層」や「将来の経営リーダー候補の若手層」の選抜・育成です。そして、このテーマについてお客様と一緒に解決に取り組む中では、以下のようなお悩みやご意見をいただき、一つひとつお答えしてまいりました。

今回のセミナーでは、これまでの実績からホーガン アセスメントを「自社ならではの人材選抜・育成」に活用する考え方について、弊社コンサルタントよりご紹介します。

ホーガンアセスメントの実績状況

2014年に弊社がホーガンアセスメントの国内提供を始めてから3年半が経ちます。これまでの実績として、様々な業種・業態で活躍している5,700人以上のビジネスパーソンにご利用いただいています。

図1.当社経由の受検者数

階層別の内訳ではマネジャークラスが最も多く、その次に多いプレマネジャーと合わせてホーガンアセスメントのメインユーザーを構成しています。またシニアマネジャーやプレマネジャーの手前である30歳前後の中堅・若手にも様々な事例で活用されています。

図2.受検者の階層別内訳

ではどのような用途・目的で使われているのか。テーマとして最も多いのが能力開発です。自分が今どのような状態であるか、そしてこれから何をしなければいけないかということを自己認識するためにホーガンアセスメントを使うといった事例があります。その次に多いのが審査・選抜です。たとえば課長や部長の昇格プロセスに導入されるケースが目立ちます。

図3.用途・目的

マネジャーやシニアマネジャークラスで特に多いのは、自己変革・組織活性化というテーマです。今まさに組織や会社を変えなければいけない、そのためにトップマネジメントを担う者が自分をどのように変えることで組織・会社を変えていくかということを理解してもらうためにホーガンアセスメントを使うというわけです。そして4番目がマネジメント育成ですが、能力開発の用途でお使いいただくお客様の中にはマネジャー育成を視野に入れているケースがかなりあります。ですので、ほとんどのお客様はデベロップ的な要素を期待されてお使いいただているというのが私たちのビジネスの現状です。

ホーガンアセスメントの測定項目

ホーガンアセスメントはパーソナリティを測る三つのテストで構成されています(図4参照)。

一つ目はHPIという「ブライトサイド」を測るテストです。適応性、大望野心、社交性など全部で7項目あります。日常の行動やパーソナリティを測定することで仕事上のパフォーマンスを予測します。

二つ目はHDSという「ダークサイド」のテストです。興奮しやすい、懐疑的、用心深いなど11項目を測定することで、緊急時や追い詰められた状況下で突発的に現れるリスク行動を予測します。

そして三つ目がMVPIという「インサイド」のテストです。認知欲求、権力志向、友好性など10項目あり、どんな価値観を持っているか、何に動機づけられるかを知ることで、仕事や組織との適合性を予測します。

これら三つのテスト結果からパーソナリティ分析を行い、自己認識を深めていくというのがホーガンアセスメントのアプローチとなります。

図4.ホーガンアセスメントの測定項目

ホーガンアセスメントを活用したタレントマネジメント

ホーガンアセスメントを実際に人材マネジメントの中でどのように活用していくか。弊社が提案するモデルを紹介します(図5参照)。

一つは社員の中から優秀人材を選抜するときにホーガンアセスメントを使うというケースです。このとき単純に昇格試験や後継者選抜の中に導入するのは早計です。自社の将来像や経営戦略に基づいて人材戦略を組み立てた上で、自社における人材のあるべき姿について質・量ともに想定し、それと現状とのギャップを測るためにホーガンアセスメントを使うということが重要だと考えます。それによってギャップを埋めるための様々な施策を打つことができますし、人材マネジメントのプロセスの中にホーガンアセスメントを落とし込むことができます。

もう一つは育成の観点から活用するケースです。あるべき人材像やハイパフォーマーから作成したコンピテンシーモデルの中にホーガンアセスメントを取り入れることで人材育成に活用していきます。

昇格審査・候補者育成での活用

昇格審査・候補者育成における活用モデルについてさらに説明します。二つの活用の仕方があります。

一つは“育成的活用”、つまり時間をかけた選抜・育成プロセスにおいて成長課題を示すための活用です。そしてもう一つは、昇格を判断するための補完材料としての“選抜的活用”です。

まず「自社にとって将来必要となるイノベーティブな人材像とはどうあるべきか」を考えることが基本となります。そのうえでマネジャーやシニアマネジャーに適合するコンピテシーモデルをつくる会社が多いと感じています。こうした自社のコンピテシーモデルをベースにして選んだ昇格対象者に対して、自分の成長課題を認識してもらい、改善を求めるためにホーガンアセスメントを使うというのが育成的活用です。

もう一つはコンピテシーモデルを使って対象者を選んでいくときに、選抜プロセスの中の補足情報として使うという選抜的活用です。つまり、選んだ人を育成するときに使うか、選ぶときに使うかという違いになります。

図5.ホーガンアセスメントを活用したタレントマネジメント

社員を”測る”ために何を見るのか

ところで社員を“測る”というとき、その人の何を見るのか、そしてそれによって何を測定しようとするのでしょうか。それをモデル化して説明したいと思います(図6参照)。

まず一つは、対象者である彼・彼女がこれまでどのような成果や業績を出してきたかを見るという成果の視点があります。そしてもう一つ、彼・彼女が普段どのような行動を取っているかを見る行動の視点があります。これらは会社の人事評価や人事考課の中に取り込まれている視点です。

しかし、今はこの二つの視点だけでは優秀人材を選抜することにおいて不十分です。そこで論文や面接のプロセスを導入するケースが増えています。例えば、面接では将来担うことになる役割に対してどう考えているか、その考えに沿ってどのように行動するかという話を確認します。つまり、役割認識の視点です。そして最後にキャラクターを見るというパーソナリティの視点があります。ホーガンアセスメントはここの部分で使われます。

これら四つの視点のうち、成果の視点と行動の視点は「過去から現在を見る視点」となります。つまり、過去の実績に基づいて将来の業績を予測しようという考え方です。それに対して役割認識の視点とパーソナリティの視点は、「現在から未来を見る」という視点です。こちらは本人の意識や人物像に基づいて将来の行動を予測しようという考え方になります。昇格審査や選抜のプロセスにおいてはこうした四つの視点で測っていくことが基本モデルであると考えています。特に“将来”について確認することは、先が見えないからこそ“予測する意味”があります。この観点か“アセスメント”をプロセスの中に取り入れることは重要であると私たちは考えます。

図6.社員を“測る”ために何を見るのか

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