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第4次産業革命がもたらす営業組織の未来予測~AI時代に勝ち残る法人営業とは!?~

開催日:2017年8月30日(水)
主催:株式会社富士ゼロックス総合教育研究所

AIやビッグデータの進化により、今後10~20年で日本の労働人口の49%が人工知能やロボットに代替されるといわれています。営業の仕事においても変化の波から逃れることはできません。複雑な顧客の要求に応える企画提案型やカスタマイズ型の法人営業は人に向いているといわれていますが、産業構造が変化し競争は激化する中、今のままで勝ち残れるのでしょうか。

激変する営業組織の未来像について、国内外の最先端の事例と営業力強化コンサルティングで世界トップのミラーハイマングループの調査から情報を提供し、今後の法人営業力強化について皆様と共に考えていくセミナーを開催いたしました。

【第一部】「未来予測2018-2030」コンピューティング革命が、営業組織やお客様との関係をどう変えるか?

講師プロフィール

株式会社アクアビット 代表取締役 チーフ・ビジネスプランナー 田中栄氏

1990年、早稲田大学政治経済学部卒業。同年(株)CSK入社、社長室配属。CSKグループ会長・故・大川功氏の下で事業計画の策定、業績評価など実践的な経営管理を学ぶ。1993年マイクロソフト(株)入社。WordおよびOfficeのマーケティング戦略を担当。98年ビジネスプランナーとして日本法人の事業計画立案を統括。03年(株)アクアビットを設立し代表取締役に就任。幅広い分野の企業で中長期戦略立案を支援。15年KPMGあずさ監査法人総合研究所 顧問に就任。著書「未来予測2018-2030レポート&デジタルサービス」「未来予測レポート」シリーズは1500社以上に導入。

人工知能付きスピーカーAmazon Echoが米国で急速に普及し、コンピュータに話しかければ、買い物ができる時代が始まりました。近い将来には法人営業でも「御用聞き」はデバイスで行えるようになるでしょう。こうした中、企業価値を決めるのは顧客との「エンゲージメント(長期にわたる深い関係を築くこと)」です。今まさに進化している米国での事例を紹介しながら、人工知能やクラウド・コンピューティングによって、営業組織やお客様との関係はどう変わるのか、「人間」にしかできない営業とは何かについて皆様とともに考えていきます。

過去の延長線上に未来はない

中長期の戦略を立てるには、今がどうなっているのか、そしてこれからどうなるのか、といった共通認識を持つことが不可欠です。今やどの分野においても10年先も安泰といえる企業はあるでしょうか。私は過去の延長線上に「未来」はないと考えています。なぜなら、社会の前提が根本的に変わっていくからです。

今、未来を創る大きな潮流があります。それはクラウド・コンピューティング、サステイナビリティ、そしてライフ・イノベーションです。この3つのメガトレンドによって社会や経済、価値観やライフスタイルは大きく変わっていきます。特にビジネスに一番大きな変化を与えるのがクラウド・コンピューティングです。これはコンピューティングの革命といえる極めて大きな前提の変化なのです。

そこでクラウド・コンピューティングによって社会がどう変わるかを概観し、営業組織とお客様との関係はどう変わるのか、人間にしかできない営業とは何かについて考えていきます。

IT→ICTから「クラウドロニクス」へ

ひと昔前はITといえばパソコンでした。しかし、インターネットにつながらないパソコンはいまや使い物にはなりません。現在はパソコンとネットワークが連携し、ICTと呼ばれています。さらに最近ではIoTといって、スマートフォンやタブレット端末だけではなく、テレビ、家電など、あらゆるモノがインターネットとつながるようになりつつあります。これはブロードバンドによる常時接続を前提として提供されるサービスです。私たちがそこで使っているのは「モノ」ではなくシステムであり、それを通じて映像や音声などさまざまなサービスを受け取ることができます。こうしたエレクトロニクスとコンピューティングの一体化を「クラウドロニクス」と私は呼んでいます。

クラウドロニクスの時代では、データ処理を行うメインパワーはクライアント(端末)側ではなく、データセンター側にあります。データセンターは単なるサーバと考える方が多いかもしれませんが、そうではありません。その実体は高性能のスパコンなのです。それを使うことによって処理能力が著しく上がり、今までできなかったようなことができるようになった。だからこそ「革命」なのです。

Amazon Echoの衝撃

クラウドロニクスによって、メディア/コミュニケーションの環境は変わり、新しいサービスやコンテンツが次々と生まれています。

たとえばFacebookは、約18億5千万人のアクティブユーザーとつながることができる世界最大のメディアであるといえます。SkypeやLINEは、無料で人とコミュニケーションできる電話の機能を果たしています。AppleのSiriは、音声インターフェースと検索エンジンを組み合わせた「エージェント」と呼ばれるものです。

音声インターフェースは、一定以上の水準で人の言葉を理解させるために、必然的に人工知能を必要とします。人工知能は次世代のコンピュータそのものであり、これから誰もが当たり前に使うようになります。

その象徴が2015年6月にアメリカで発売された「Amazon Echo」です。これは人工知能付きスピーカーですが、昨年末までに全米世帯の約8%まで普及したといわれています。Amazon Echoは非常に高い精度で音声を理解し、質問に答えたり、要求されたサービスを提供したりします。話しかけるだけなので、お年寄りから子供まで容易に使うことができます。何か欲しいものがあるときは、Amazon Echoに注文すれば、商品を購入することも可能です。つまり、家の中に御用聞きがいるのと同じ状態になるわけです。

働き方が変わる

こうした状況で、営業はこれからどうなるのか。よく聞かれるのが、人間の仕事が人工知能に取って代わられるのではないかという話です。そうなったら、どうやって働けばいいのか。計算能力、記憶力、さまざまな能力において人間を超える人工知能にかなうはずがないではないかと…。

働き方が変わる

しかし、人工知能であろうと所詮は道具。どんなに賢く、記憶力が良くても、コンピュータには責任を取ることができません。責任が取れるのは人間だけです。コンピュータが想定外の挙動をしたりエラーを起こしたりすれば問題になりますが、人間は失敗してもおおよそのことは許される。新しいビジネスは試行錯誤の連続です。さまざまなことに挑戦し、失敗を繰り返しながらも人間が判断していくしかありません。

人間にしかできないことはたくさんあります。特に営業は、信用や信頼が求められる職種です。逆に思いや感情を持たない人工知能には、お客様との信頼関係は築けません。人工知能の進展によって、人間に求められる能力は大きく変わっていきます。それと共に働き方も変えていかなければなりません。

商流・物流・金流の変化

コンピューティング革命は、ビジネス環境を大きく変えます。これは、「商流」「物流」「金流」の変化としてまとめることができます。

ここでいう商流(コト)とは情報の流れです。お客様との「コミュニケーション」の部分、つまりマーケティングのこと。従来のマスメディア広告から個人に向けてピンポイントで広告が打てるようになります。ネット広告やSNSが一般化したことで、以前よりはるかに低いコストで中小企業や個人でも情報発信ができ、しかも従来の一方向のプロモーションから、双方向のコミュニケーションも可能になります。

物流はモノの流れであり、頼んだ商品が即日配送で届くようになります。物流の世界を大きく変えているのは、やはりAmazonです。自動化されたロボット倉庫によって、1時間以内の配送や大幅なコスト削減を実現しています。

金流(カネ)については、「決済手数料ゼロ」が当たり前となり、しかも世界中リアルタイムで決裁できるようになります。お金の概念も変わってきています。デジタルデータがお金として使えるくらい信用を得るようになりました。典型的なのがTポイントです。コンビニやネットでも利用でき、1円単位で価値のやりとりができます。

エンゲージメントが生み出す企業価値

ビジネス環境の変化によって、経営戦略も変化を迫られています。1つは大企業の概念です。これまで大企業が安泰といわれたのは、資本力があるからでした。それによって多額の設備投資や労働者の雇用を行うことができ、生産能力と競争力を上げてきたわけです。しかし、今や過大な設備投資はリスクでしかありません。今はお客様とどれだけ深いつながりが持てるかという「エンゲージメント」が企業価値を生み出す時代となっています。

「大企業」の概念が変わる

靴を中心とする米国の通販会社「Zappos」は、ネット企業でありながら電話によるカスタマーサービスに力を入れることで急成長し、創業10年余りでAmazonに1,000億円で買収されました。社員が自分の個性を打ち出し、徹底的にお客様の満足を高めることによって、それだけの価値を生み出したのです。どれだけお客様とエンゲージできるか、そしてファンになっていただくか。それがこれからの営業に求められるものであり、人間にしかできないことであります。

【第二部】AI搭載のセールスフォースオートメーションがもたらす営業活動の未来像

講師プロフィール

株式会社マツリカ 代表取締役Co-CEO 黒佐英司氏

ニューヨーク州立大学バッファロー校卒業後、積水ハウス株式会社にて個人向けの企画提案、法人・資産家向けの資産活用提案、海外事業開発において企画営業 及びマネージャーに従事。2011年に株式会社ユーザベースに入社し、営業開発チームの立ち上げを担当、以来、営業部門、マーケティング部門及び顧客サポート部門の統括責任者を歴任し、SPEEDA販売促進・保守、営業・マーケティング戦略の立案及び執行を担当した後、2015年に株式会社マツリカ(mazrica inc.)を共同設立。

AIの時代において、ディープラーニング、ビッグデータなどのキーワードが多く聞かれるようになりましたが、技術そのものよりも、どの分野においてどう使うかが重要です。弊社は営業分野での活用に着目し、AI搭載SFA 「Senses(センシーズ)」の開発・運営を進めて参りました。従来のSFAは「管理」に寄りすぎ、運用面でつまずきやすかったところ、Sensesは「現場」に寄り添い、組織に溜まったナレッジを利用し、コンシェルジェのようなアドバイスを随所で行います。Senses開発の経緯やAIを使ってどのようなことが出来るのか、皆様にご紹介していきます。

営業が抱える課題

営業の仕事といえば、B to B/B to C、あるいは新規開拓/ルート営業など、その形態はさまざまです。とはいえ、どの営業にも共通する悩みがあるかと思います。それは数字に追われること、あるいはマルチタスクに追われること、そして情報共有が足りずに仕事が属人化していることです。

そもそも営業の価値とは何でしょうか。顧客と良い関係と築くこと、自社の商品やサービスの提案をすること、顧客の要望を組み取ること、最終的に契約を取ることなどあります。私が考える一番重要な営業の価値とは、商材の価値をどれだけ100%近くまで伝えられるかということです。リピート購買でない限り、マーケティングや広告で伝えられる価値は限界があります。また、生産者がわかっている価値以上のことは伝えられません。このラストワンマイルのギャップを埋めに行くことが営業の重要な価値ではないかと思います。

商材の価値を伝えるには、当然商材の知識が必要です。正確かつ深い知識で商品を説明できるか。また、顧客の検討状況を理解することも重要です。効果やコスト、期限を適切に理解した上で、商品を提案できるかどうかが問われるでしょう。

営業の課題を整理する

営業の課題についてさらに具体的に挙げてみます。

  1. そもそも商品の価値を理解できていない
  2. 外出など行動に無駄が多い
  3. 顧客のニーズを把握しきれていない
  4. 提案書作成やメール処理に時間が取られ過ぎて訪問活動が疎かになる
  5. 複数の顧客に同時提案をしており連絡の抜け漏れがある
  6. ベストなタイミングやベストな内容の提案ができていない
  7. 提案などが顧客主導になり御用聞き営業になってしまう

これらを整理すると、知識・経験の不足に起因する課題(1、3、6、7)と、効率化に関わる課題(2、4、5)と2つに分けられます。では、機械で解決できそうな課題はどちらでしょうか。それは効率化に関わる課題です。つまり、機械の自動アラート機能のように、自分だけでは気づききれない部分に適切なタイミングで適切なコミュニケーションを促すことができれば解決できます。逆に知識や経験を必要とする課題は単純なオペレーションではないため、機械で解決することは難しいです。人が解決することに向いている課題です。

ツール(機械)で解決できること

営業の効率化を助けるツールとして広く知られているのがSFAやCRMです。特に私が考えるSFA活用の一番のメリットは、営業活動における定性的な情報を定量化してくれることです。たとえば、あるトップセールスの行動について、「商談後1時間以内にお礼のメールを送っている」、「初回アポからクロージングまでかける期間が長くても1ヶ月」といった他の人の目に見えないような営業プロセスを数値化することで、分析や解析が行えるようになります。

一般にSFA導入で解決できることは、案件の進捗確認や取引先情報の共有、毎日の行動管理、売上予測などです。本来は役に立つツールですが、弊社が実施した導入後の満足度調査では、導入企業の半分以上が当初予定していた課題の解決に至っておらず、さらに利用自体にも満足できていないという結果となりました。その原因は大きく3つあります。まず入力負荷があるため現場に定着しないこと、次に現場目線やUI設計の欠如により操作性が悪くて使いこなせないこと、最後が現場の利用メリット不足です。要するに管理者側には数字が把握できて便利だが、現場にとっては入力が面倒なわりに見返りが感じられないということです。

ツール導入失敗の背景・理由

Predictive CRMとSensesについて

では、海外の最先端ツールの動向はどうなっているのか。2、3年前から北米で次世代のCRMとして活性化しているのがPredictive CRM(予測型CRM)です。AIを使ったサービスを提供する世界100のスタートアップのSalesTech領域においては、ほとんどがこの領域で事業展開をしています。

Predictive CRMのポイントは、3つに集約できます。まず1つ目がデータは蓄積するだけでなく活用するためにあること、2つ目がデータ分析によって従来は肌感覚として持っていた営業の勝ちパターンを可視化すること、そして3つ目が過去の傾向から未来を予測することです。

弊社が提供する「Senses(センシーズ)」は、まさにこのPredictive CRMに照準し、独自に開発したAI搭載SFAツールです。営業の日々の行動において新しい気づきを示唆するプロダクトとなっています。たとえば、お客様への提案について新人営業からアドバイスを求められたとき、先輩営業やマネージャーは過去の経験や知識から上手く行った事例などを思い浮かべて助言したりしますが、それをAIが代わりに行ってくれるというイメージです。

Sensesの特徴は主に3つあります。1つ目はグループウェアなど外部連携による入力負荷の軽減、2つ目は使いやすいUI設計、そして3つ目が「いつ」「誰に」「何を」「どのように」行動するかという効果的な提案をはじめ、成果に直結する営業プロセスをAIが直接的に支援してくれることです。特にAIの活用に関しては、日本では未開拓の領域であり、弊社がチャレンジする理由もそこにあります。

未来の営業像

AIとはもちろん人工知能のことですが、私はあえてそれを「拡張知能」と表現しています。特に営業の世界でAIと上手く付き合うには、人の“模倣”であるArtificial Intelligence(人工知能)ではなく、人の“拡張”であるAugmented Intelligence(拡張知能)を目指すべきであると考えます。

具体的には人にしかできない部分は人が行い、その手助けをしたり、気づきを与えたりするものとしてAIを使う。営業というのは、多分に属人化された暗黙知に依存している仕事です。その暗黙知を引き出して形式知化し、気づきを与えてくれる存在としてAIと上手く付き合うことで成果を最大化する。そして、AIに任せられることはAIに任せ、より多くの時間を考えることやクリエイティブなことに使って、営業を楽しめるようになっていければいいと考えています。

商材の価値を伝えるには、商品の知識や顧客の検討状況の理解に加えて、人間的な魅力も重要です。その人自身の魅力でお客様を惹きつけることで、信頼を得たり、説得力が増したりします。この先AIがいくら発展したとしても、営業は最後まで残る職種と言われていますが、それくらい営業というのは人間にしかできない部分が詰まった、創造的で魅力ある仕事であると私は思います。

【第三部】第4次産業革命を勝ち残る高付加価値営業に必要な営業力とは

講師プロフィール

株式会社富士ゼロックス総合教育研究所 セールスイノベーショングループ長 安田和史

1991年に(株)富士ゼロックス総合教育研究所入社。営業コンサルタント時代から、営業課長、営業部門長時代まで「24期連続営業目標達成」により全社表彰。その後、営業推進、商品企画、マーケティング、経営企画、新規事業 等の部門長を歴任し現在に至る。2017年からセールスイノベーションビジネスの立ち上げに伴い、現職。

AIの普及は加速し、その報道がされない日はないほどです。しかし、法人営業における複雑な意思決定プロセスや、取引に影響を及ぼす顧客の複雑な思考や感情に柔軟に対応し営業活動を成功に導くことは、「人間にしかできないこと」と言えるのではないでしょうか?本セミナーでは、世界最大級のセールスフォースコンサルティングファームである、ミラーハイマングループ(MHG)が長年にわたって培ってきた調査データやメソッドをもとに、法人営業における高付加価値営業のポイントをご紹介いたします。

AIにできないこと

現状ではAIにできないことは何でしょうか。大きく分けて3つあると思います。1つ目は新しいものを創出する。抽象的な概念を構想する。「創造性」です。2つ目は意志や感情を持って決断する。価値観に基づき善し悪しを決める。人への信用や信頼に基づき交渉する。といった責任が伴う「意志決定」です。3つ目は他者への共感や誰かの役に立ちたいといった「感情」です。営業活動において求められる「信用や信頼」そして感情や想いという「心の力」は、現段階ではAIには代替できない、人間だけが兼ね備えている強みと言えるのではないでしょうか?

魅力のある営業とは?

お客さまから見て「魅力のある営業」は、技術が進歩すればするほど、今まで以上に必要とされていくと私は考えています。したがって、営業個人も営業組織も共に、「魅力的な営業行動」を積み重ねていくことが重要です。今回は、法人営業における営業行動を支えるプロセスプラットフォーム(手法)をご紹介し、法人営業における高付加価値営業のポイントをご説明いたします。

意思決定プロセスの複雑化

私たちのパートナーであるミラーハイマングループ(MHG)のグローバル調査によると、法人営業においては、関係してくるプレイヤーの数、購買プロセスの定型化、平均セールスサイクルの長さ、顧客がROIに言及してくる確率、顧客リピート率のいずれに関するポイントも伸びている傾向にあることがわかりました。これは、法人営業におけるお客さまの意思決定プロセスは、まずます複雑化していることを意味しています。

意思決定が複雑化した法人営業のプロセスをコンプレックスセールスと言います。課題の大きさが戦略課題に近く、顧客の経営上位層まで意思決定に絡んでくる。また、ソリューションは複数の手段の組み合わせであり、商談プロセスにおける利害関係者が多く、状況がよく変化する。これらのことから意思決定まで時間と営業コストがかかる、というのがその特徴です。コンプレックスセールスでは、高度なコミュニケーション力、場の空気を読んだ、非定型なビジネスプロセスの変化に対応できる能力が求められます。

SRPとは何か

ここで、自社の営業力を把握するための指標として、SRP(Sales Relationship Process)を紹介します。SRPとは、MHGの調査会社であるCSOインサイト社が世界数万社の営業組織のデータを集めて開発した、自組織と顧客との関係性レベル、および自社の営業プロセスレベルをマトリクスで示したものです)。横軸を営業プロセス、縦軸を顧客関係性としています。

CSO Insights Sales Relationship Process (SRP) Matrix 2016年度調査より

まず横軸の営業プロセスを説明します。一番左の「ランダム」は、個々の営業が個人技で活動しているレベルです。プロセスやルールがなく、場当たり的といえます。「インフォーマル」は、プロセスは一応あるが形式的で徹底されていないレベルです。「フォーマル」は、プロセスがマネジメントの中で徹底されているレベル、「ダイナミック」は、「フォーマル」レベルが実現された上で、なおかつ、さまざまな情報がCRMなどのツールにリンクされ活用されているレベルです。

次に縦軸です。一番下の「製品納入先」は、認められた製品・サービスを提供しているが、複数ある取引社の1社に過ぎないレベル、「優先サプライヤー」はすでに納入実績があり、契約数を増やしているというレベルです。「業務課題解決の相談相手」は製品・サービスへのフォーカスが弱まり、顧客のビジネスの問題・課題に中心軸があるレベル、「事業戦略の貢献者」はそのレベルがさらに上がり、顧客内部の会議にも参加し意見を述べるようなレベル、そして「経営課題達成パートナー」は、顧客の事業を総体的に理解し、顧客の意思決定にも助言をする経営アドバイザーのような存在です。

さて、こうした横軸・縦軸に対して、自社の営業はどこに位置づけられるでしょうか。CSOインサイト社が2016年度調査の結果に基づいて作成したのが下図です。レベル1→レベル2→レベル3となるにつれて成果を生み出しているということです。したがって、営業力の強化とは、いかにしてSRPのレベルを向上させていくかということになります。

SRP Matrix レベル別業績数値

営業プロセスから着手する

では、どこから手をつければいいか。それは横軸の営業プロセスからです。なぜなら、横軸は自社の努力によって自律的に動かすことができるからです。それに対して縦軸はお客さまとの関係性ですので、いくら自社で努力してもすぐには動かすことはできません。

では、どのような手順で横軸のレベルを上げていくか?それは4つあります。1番目はトップセールスがなぜ成功を収めているのか、その成功の要因ややり方を把握すること。2番目にそのやり方を把握するだけでなく、把握した情報を全社で共有すること。3番目はその情報に基づいて採用を行うこと。そして4番目に採用後の育成もそれに従って行うこと。つまり、首尾一貫してトップセールスの成功要因を基にした施策を打っていくことが横軸向上のポイントとなります。そのためには、SFAやCRMなどのツールを使って、組織内で情報を共有できる仕組みをつくることが重要です。

一方、縦軸を上げるにはどうするか。それは、お客さまへの日々の活動をある意図を持って戦略的に積み重ねていくことで、お客さまの「認知」を変えていくことしかありません。お客さまは日々の私たちの活動を経験し、それが評価となり、私たちを「○○の会社」「△△の営業」と認知します。しかし、長年培ってきた認知を変えることは容易ではありません。だからこそ、組織的な認知向上活動の、計画的・継続的な積み重ねが何よりも重要になります。

戦略に対する「理解度」を高める

MHGでは、横軸・縦軸を向上させるためのフレームワークとして、それぞれ「Blue Sheet」「Gold Sheet」という独自のメソッドを提供しています。

縦軸のプラットフォーム(Blue Sheet)
横軸のプラットフォーム(Gold Sheet)

ただし、フレームワークを導入しただけでは成果は上がりません。

弊社、富士ゼロックス総合教育研究所では、戦略実行について研究開発を重ねてまいりました。戦略実行において重要なことは、経営層から戦略についてのメッセージが現場に正確に伝わっているか?そして現場は戦略を理解できているか?また理解できているだけではなく納得した上で実行できているか?これらが組織として実現できていなければ、どんな優れた戦略・施策でも機能はしません。特に重要なのは「理解」です。ともすると「実行」に目が行きがちですが、人間は理解できないことは納得できないし、納得できないことの実行を継続することはできません。戦略や施策の「理解を高める」ことに焦点を当て、戦略・施策の実行計画を立案していくことが肝要かと思います。

したがって、SRP向上のためにまずすべきことは、「理解度」の向上がまず必要です。「理解度」向上のためには、SRP向上施策を展開する前に、営業戦略と成果目標を組織内で共有し、SRP向上施策と関連づけながら「理解度」を向上させることを、現場が腹落ちするレベルまで徹底することです。

法人営業において、AIの技術がいかに発展しようとも、お客さまから見た「魅力ある営業」の育成は、これからも営業組織において、重要課題であり続けると私は思います。お客さまから見た「魅力ある営業」の根底にあるのは「人間力」です。「人間力」は、お客さまの立場や状況を思いやること、自社の利益にとらわれず、売り手と買い手の相互満足(WIN-WIN)に基づき、正しい行動をすること、相互満足(WIN-WIN)を保ち、お客さまとの関係性を発展させること、豊富な実践知に基づき、善し悪しの判断ができること、誠実であること、約束を守ること、など、いわば「徳」のある行動がとれる営業人材を育成することに他なりません。それは、AI時代の営業人材の育成において益々重要になると私は考えます。

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