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法人営業組織の業績向上に効く2つの視点 ~営業コンサルティングで世界トップのミラーハイマングループの調査より~

セールスイノベーショングループ コンサルタント
高城晴美

法人営業組織の成功のために

法人営業においては、重要顧客と長期的に取引を継続することが、競合会社の参入を防ぎ、安定的に収益を上げるための盤石な方法といわれます。法人顧客の要望はますます複雑で高度化しており、どんなに優れた営業担当者でも個人の力で競合会社を上回る対応をすることは難しくなっています。

あるオフィス機器の法人営業の例ですが、営業担当者はある機械メーカーの購買担当部門の総務部長と長年の取引があり懇意にしていました。ある時、買い替えの合意をもらい喜んでいた矢先に、そのオフィス機器を使用する技術部門の役員から突然他社を検討するように強く指示が出て契約が流れてしまいました。後でわかったことは競合会社の営業が自社の役員の人脈を使って、この技術部門の役員にアプローチをかけ設計業務の効率化について話し合っていたのです。結果的に顧客はこの競合会社から製品を購入し、現在業務改革を進めているとのことでした。この例の敗因は、組織対応の営業活動ができておらず、経営層を含めた複数部門の複数の関係者とコミュニケーションを取っていなかったことといえます。

本コラムでは、法人営業組織が競合に勝ち、高業績を上げ続けるための営業力強化について、グローバル調査の結果から生み出されたフレームワークを基に考えていきます。

セールスリレーションシップ/プロセス(SRP)マトリクスの活用

弊社は営業組織力強化のコンサルティングで世界トップのミラーハイマングループとアライアンスパートナー契約を結んでいます。法人営業力強化のフレームワークとして、ミラーハイマングループ内の専門調査機関 CSO Insights社が2006年から11年にわたり毎年実施している「営業パフォーマンスの最適化に関する調査参考文献1」に基づき考案された、「セールスリレーションシップ/プロセスマトリクス- Sales Relationship/Process(SRP) Matrix」をご紹介します。このマトリクスを使うことで、法人営業組織のパフォーマンス強化と生産性向上の方向性を検討することができます。

このマトリクスは、横軸に「営業プロセスの成熟度」、縦軸に「顧客関係性の成熟度」のレベルを置いています。「営業プロセス」と「顧客関係性」の2つの視点で、営業組織の現状(現在地)と、今後競争力を高め続けるために到達したい位置(目指す位置)をマトリクス上にプロットし、その変化を実現するための今後の取り組み課題を考えます。

セールスリレーションシップ/プロセスマトリクス

まず、マトリクスの横軸「営業プロセス」レベルの定義を見ていきましょう。標準プロセスの有無や営業活動へのプロセスの活用をモニタリングしているかどうか、モニタリングの結果を営業活動やプロセスそのものの見直しに活用しているかでレベル分けしています。

営業プロセスの成熟度レベル

レベル1 プロセスがなく場当たり的管理 標準的な営業プロセスがなく、営業担当者は自分のやり方で活動している
レベル2 プロセスはあるが形式的 会社は営業プロセスを公開し、営業担当者に活用促進しているが、モニタリングや測定はしていない
レベル3 プロセスを定常的に活用 会社は営業プロセスの活用を定常的に強化し、限定的ではあるが効果を測定し、分析に基づいて営業活動を変化させている
レベル4 プロセス基準によるPDCAが定着 会社は営業活動をモニタリングし営業プロセスの進捗状況を継続的に営業現場にフィードバックしている。さらに市場の変化を捉え、問題が出る前に継続的に営業プロセスを修正している

前述の「営業パフォーマンスの最適化に関する調査」から「営業プロセス」のレベルが上がると、次の4つの指標が改善することが分かっています。

  1. 売上目標達成者の割合
  2. 全社の収益計画の達成率
  3. 売上予測の精度
  4. 全社の営業担当者の離職率

さらに2008年の同調査で「顧客関係性」のレベルもこの4つの指標の改善に影響することが分かりました。次にマトリクスの縦軸「顧客関係性」レベルの定義を見ていきましょう。

顧客関係性の成熟度レベル

レベル1 製品購入先 正式な製品購入先と認識されているが、競合製品と比べて特別優れた特徴があるとは見なされていない
レベル2 優先的サプライヤー 市場の評判や過去の取引から、競合よりも自社が優先的な製品購入先と見なされる
レベル3 業務課題解決の相談相手 製品の組合せや付加価値やサービスによって、製品やサービスの最適活用の相談相手と見なされる
レベル4 事業戦略の貢献者 製品やサービスを超えて、直面している変化に対応するための戦略立案の支援者と見なされる
レベル5 経営課題達成のパートナー 長期的な成功の視点で、製品導入、課題検討、プロセス推進などを支援するパートナーと見なされる

レベル1から3までは製品を軸とした関係性、レベル4と5は、製品を超え顧客の成功支援を軸とした関係性を構築できているかどうかでレベル分けしています。

例えば冒頭のオフィス機器の会社の例で、どこにプロットされるか考えてみましょう。この会社では、SFAによって定義された営業プロセスがあり、SFAへの案件進捗状況の入力は義務付けられています。推進部門が入力の促進をしていますがまだ十分ではないため「営業プロセス」はレベル2です。「顧客関係性」は、製品は競合とあまり違いがないものの、営業やメンテナンスの細やかな対応の良さで顧客満足NO1を獲得し顧客に選ばれているためレベル2と評価できます。

さて、あなたの所属している営業組織は、マトリクス上のどこにプロットできますか?

法人営業力強化の2つの方向性

マトリクス上の現在地を定めたら、次に、今後どの位置を目指すのかを特定します。それにより、法人営業力強化のために何を強化すべきかを明確にすることができます。強化の方向性は2つあります。

  1. 「営業プロセス」のレベルを上げる
    「営業プロセス」は、プロセスの定義やマネジャーの支援、モニタリング方法など、すべて自社の意思決定によって変えることができるので、徹底すれば短期的にレベルアップが狙えます。また、営業プロセスを定義する際に、例えばアフターフォローのプロセスで、製品使用状況の報告や、顧客経営層と定期的に接点を持つ機会を持つことを活動項目に設定すれば、「顧客関係性」を上げていくことにもつながります。
  2. 「顧客関係性」のレベルをあげる
    時間をかけて顧客の期待値を上げ、それに応えることで顧客関係性レベルを上げていきます。「顧客関係性」は、顧客が自社をどう認識しているかという期待値であるため、日々の営業活動によってすぐに変えることは難しいといえます。営業部門の上位者や他部門も含めた組織全体で、どのような顧客接点を作り出し、顧客の期待値を上げるのかを設計します。そして、案件を成約するための活動と並行して、顧客関係を強化するための活動計画を立て実行します。これは中長期的な取り組みとなるため、本当に重要な顧客に絞ってレベルアップを狙う方法です。

どちらの方向性を取るとしても、自組織の営業担当者のタイプやスキルといった個人特性とともに、営業サポートツール、ナレッジシェアリング、報酬制度などの組織としてのしくみを点検し、目指す変化を加速させていくことが大切です。

先ほどのオフィス機器の会社では、2年後までに「営業プロセス」レベル4、「顧客関係性」レベル3への到達を目標に掲げました。今は「営業プロセス」レベルを上げることに注力しています。SFAに蓄積されたデータの活用を営業マネジャーに徹底し、営業担当者の案件進捗のコーチングでの活用も始めています。

「営業プロセス」「顧客関係性」と業績の関係

ここで、みなさまが疑問に思うのは、「営業プロセス」や「顧客関係性」をレベルアップするのはいいが、本当に業績向上に結びつくのか?ということではないでしょうか。最後にこの点についてご説明します。

前述の調査結果から、下記のように「営業プロセス」や「顧客関係性」レベルとパフォーマンスレベルの関係をマトリクス上に表しています。3つのパフォーマンスレベルは、前述の1.売上目標達成者の割合、2.全社の収益計画の達成率、3.売上予測の精度、4.全社の営業担当者の離職率という4指標と調査回答者の回答内容を使って設定されています。

マトリクス内に表示しているパーセンテージは、回答組織の何%がそのレベルに該当しているかを表しています。

セールスリレーションシップ/プロセスマトリクス 2016年調査結果

パフォーマンスレベル1~3における4指標の達成率は次のとおりです。

パフォーマンスレベル1 パフォーマンスレベル2 パフォーマンスレベル3
1.売上目標達成者の割合 50% 58% 63%
2.全社収益計画の達成率 80% 84% 88%
3.売上予測の精度 成約率 43% 47% 51%
失注率 34% 29% 26%
進捗なし 23% 24% 23%
4.営業の離職率 18% 15% 14%

パフォーマンスレベルが上がると、各指標の達成率が改善していることがわかります。例えば、「売上目標達成者の割合」は、レベル1は50%、レベル2は58%、レベル3は63%と明らかに向上しています。「営業プロセス」や「顧客関係性」のレベルアップにより業績向上が見込めるのです。

AIやクラウドコンピューティングなど技術革新が急速に進む中、顧客のニーズの高度多様化、異業種の新規参入などビジネス環境は激変しています。競合会社に勝ち事業成長し続けるために、法人営業組織全体で取り組む営業力強化の方向性について本コラムが少しでもお役に立てれば幸いです。

参考文献

  1. Sales Performance Optimization Study 2016 Key Trends Analysis (CSO Insights)
  2. CSO INSIGHTS RESERCH DATE EXPERTISE 2015 (CSO Insights)

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重要顧客との関係強化コンサルティング

著者プロフィール

高城 晴美
高城 晴美

株式会社富士ゼロックス総合教育研究所 セールスイノベーショングループ コンサルタント

働く人の自立的な学びの情報環境づくりのマーケティング企画およびコンサルティング営業を経験後、2000年㈱富士ゼロックス総合教育研究所に入社。PSSなどグローバルパートナーの科学的な営業教育プログラムのローカライズ開発、オーダーメイド開発、リサーチ&アセスメントの企画・実行支援に従事。現在は、「法人営業力強化」をテーマにソリューション開発とマーケティング展開に取り組んでいる。

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