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今、あらためて考えるプロジェクトマネジメント ー トップ10 STRATEGY EXECUTION トレンド2017 より ー

マーケティンググループ 中村亜子

昨今、配車サービスを提供するUber(ウーバー)や金融とIT(情報技術)を融合したサービスFintech(フィンテック)、自動運転技術搭載の車などが台頭してきているように、さまざまな分野でビジネスそのものが、これまでの「いいモノを作り、モノの価値を売る」ビジネスから、「モノを用いたサービスの価値を売る」ビジネスに変わってきています。

日本では、これまでどちらかというとIT業界を中心としたニッチな世界でその専門領域が確立されてきたプロジェクトマネジメント(PM)ですが、昨今のビジネス変化に伴い、プロジェクトマネジメントの考え方が大きく変わり始めています。

 今回のコラムでは、そうしたビジネス変化に伴う ”PMトレンド” について、弊社の海外アライアンスパートナーであるTwentyEighty Strategy Excution社(旧ESI社)から毎年発信される「Top10 Trend 2017」のキーワードを読み解き、あらためてこれからのPMについて考えます。

 ※「Top10 STRATEGY EXECUTION Trend2017」と照らし合わせながら、お読みください。「Top10 STRATEGY EXECUTION Trend2017」の英文オリジナル、および日本語版資料はダウンロード資料コーナーからダウンロードできます。

1.The Birth of One Meta-Practice メタ的実践の誕生

これは、企業が求めているのは、形式よりも実践重視のPMである、という話です。

PMに限らず、ビジネスアナリシス(BA)も含め、これまでこうした領域は、ある意味、カチッとした定義、お作法があり、それらに倣って進めることが是とされてきました。それ自体を否定はしませんが、例えば「やれ、アジャイルだ」「いや、これはウォーターフォールだから・・・」と方法論がどうこうではなく、企業は「自分たちのビジネスに役立つのは何か?使えるベストプラクティスは何か?」とうように、超実践的なビジネス課題の解決に関心があるのです。プロジェクト現場の実務者たちは、これまでの慣習で進めるのではなく、「自分たちのビジネス課題を解決するには何が必要か?」を起点に柔軟な発想でプロジェクトを“推進”していくことが求められているのではないでしょうか。

2. Digitalisation – A New Project Management Tribe デジタル化-新たなプロジェクトマネジメント集団

モバイルやクラウド、データを用いたさまざまなテクノロジーの採用により、ビジネス・プロセスが変わる中、そうした新たな技術を駆使し、会社レベルのプロジェクトをより効果的に早く回す方法を模索している集団を、TwentyEighty Strategy Execution社は「デジタルプロジェクト・マネジャー」と呼んでいます。ここでも、やはり従来の方法論や慣習ではなく、実践重視をあげています。また、デジタルプロジェクト・マネジャーたちは、自分たちで互いに支援しあうコミュニティをもち、楽しみながら、トライ&エラーで前に進め、更には得たものを他部門へも共有していく、という特徴があります。オープンイノベーションのイメージに近いと思います。閉鎖的な匠集団のイメージがあったPM集団(特に技術系!)も、これからは開かれた世界に出て行かなければならないようです。

 3. Change Managers are Essential for Innovation イノベーションに必須の変革マネジャー

これまで、「いるとよい」という存在だった変革マネジャーのポジションが、今やどの企業においても必須の役割となり、変革やイノベーションは、組織の公式なプロジェクトとして実行されています。では、誰が変革マネジャーにふさわしいのでしょうか?TwentyEighty Strategy Execution社は、プロジェクトをマネジメントするプロジェクト・マネジャーこそが、変革マネジャーであるとしています。従来のようにQCDを守り、モノの価値を提供するところから、更に視座を高め、組織が定める戦略の方向性とプロジェクトの整合性を図り、ビジネス価値を創出する、といった働きが期待されているのです。

 4. The BA and PM Partnership Strengthens BAとPMの協力関係強化

ビジネスアナリスト(BA)とプロジェクト・マネジャー(PM)の関係は、各々の業務範囲・内容や互いの役割などの重複に対する衝突のような問題が時々生じていましたが、これからは、より効果的に組織戦略を達成するために、互いのベストプラクティスをうまく組み合わせて、適応性のある戦略実行をしていくでしょう、という話です。日本では、BAとPMの役割が社内においても、ユーザー企業とIT企業の関係においても海外ほど明確にはなっていないため、ここにあるような衝突はないと思います。とはいえ、日本独自のプロジェクトが少なくなる中、否応なしに海外からもBAやPMはやってきます。適応性のある戦略実行という共通のゴールに向かって、BA、PM互いの役割を予めしっかりと識別しつつも、縦割りではなく、互いの協力関係を強化していく必要があるのです。そのためにも、互いの領域はどこか、どんな役割なのかを知っておきたいものです。

 5. Renewed Focus on Benefits Management 再び注目されるベネフィットマネジメント

“ベネフィット”というと、最初にイメージするのは、一般的には利益ではないでしょうか。しかし、それだけではありません。企業によっては、シェア拡大であったり、ブランド力向上であったり、社員の技術力の向上であったり、、、と最終的には利益につながるとしても、ビジネス価値を創出する、さまざまなベネフィットが存在します。これまで、QCD中心であったプロジェクトマネジメントの世界では、ベネフィットマネジメントの概念は、難解でなかなか受け入れにくいものでした。しかし、昨年あたりからPMI (Project Management Institute, Inc.)(*1)では「ベネフィット・リアライゼーション・マネジメント(BRM)」という新たな概念を打ち出し、その重要性は各シンポジウムやフォーラムなどで叫ばれています。(7月に開催されたPMI日本フォーラムでも、BRMというキーワードが飛び交っていました。)2017年、シンプルなプロセスとして再考案されたベネフィットマネジメントは、もはや上流のビジネスサイドだけの話ではなく、変革を担うPMにこそ、実用的なプロセス、ステップで実現していくことが求められています。

(*1) プロジェクトマネジメント協会。1969年に設立、本部は米国。グローバル規模で、プロジェクトマネジメントの普及活動として、標準策定、資格認定、コミュニティ活動などを行う非営利団体。

6. Project Management is for Everyone プロジェクトマネジメントをすべての人に

 日本では、これまでどちらかというとIT業界を中心としたニッチな世界でその専門領域が確立されてきたプロジェクトマネジメント(PM)でしたが、今日のビジネスシーンでは、実にさまざまな ”プロジェクト”が発足し、プロジェクトのリーダーシップが用いられています。

今やPMは、ある特定の人たちのものではなく、すべての人に必要な知識・スキルと言えます。組織の戦略を一連のプロジェクトによって実行していくために、従来の専門家としてのPMたちは、PMIが提唱する進化したコンピテンシー=タレントトライアングル(*3)を身につけなければなりませんし、また、それ以外の人たちは、これまでの何となくの経験だけではない、PMスキル向上に取組むことで、組織にとって望ましい結果が生まれることでしょう。

(*3) PMIが提唱するプロジェクト・マネジャーに求められるスキルエリア。テクニカルPM、リーダーシップ、戦略&ビジネスマネジメントの3つがある。

 7. Value is the Buzzword バリュー(価値)はバズワード

 これは少々、耳の痛い話です。皆さんもご経験ないでしょうか?お客さまとの商談場面やプロジェクト・ミーティングの途中で出てくる魔法の言葉、「バリュー(価値)」。その場では、なんとなく全員が同じ理解をしているようで、実は、明確になっていないことが多いのではないでしょうか。価値という言葉に限りません。プロジェクトのスコープ定義、ステークホルダーの要求の引き出しから要件定義、すべてにおいて関係者間でその意味や定義を具体的、且つ、誰もが理解できる言葉で分かり易く識別すること。これがプロジェクトマネジメントの肝になります。

8. Accountability through Coaching コーチングを通じた責任

TwentyEighty Strategy Execution社の調査によると、プロジェクト組織では、プロジェクト全体のパフォーマンス向上のために、コーチング・プログラムを取り入れているそうです。みなさんのプロジェクトでは、どうでしょうか? 昨今の目まぐるしいビジネス環境の変化も背景にあり、若手PMが経験を積むのを待っていられない中、経験のある上級PMによるコーチングは一つの手かもしれません。一方、最近、日本のPM育成現場で注目されているのが、「ケースメソッド研修」です。過去の事例や経験をベースに、「自分だったら、どうするか?」「どう振舞うか?」を中心にグループでディスカッションを行い、自分だけでは気づかない視点や発想を見つけることで、自分の引き出しを増やしていくものです。こうした取組みも、ある種のコーチング・プログラムにあたるのかもしれません。

9. Co-Location, Distributed Work and the Rise of Collaboration コロケーション、分散型作業、コラボレーションの台頭

さまざまな形のプロジェクトの出現にともない、働く手法も多様になってきている、という話です。組織では、プロジェクトマネジメントの世界で使われてきた手法(コロケーションやバーチャル・ワーキング手法など)だけでなく、日々進化するテクノロジーが、どのようにしてチームの協働を簡単にしたり、または、新たな協働スタイルの推進に対する抵抗を取り除けるかへの関心が高まってきています。今や、私たちの働き方の殆どが、プロジェクト型ということもありますが、昨今、日本で取り上げられている、「働き方改革」にも通じると思います。

 10. Agile is not just for IT アジャイルはITだけのものではない

アジャイルというと、IT、特にアプリケーション開発のイメージが、まだ残る日本ですが、その考え方は、確実に他の領域にも広がっており、これまでのスケジュール先行の計画やお作法に固執するのではなく、必要に応じて柔軟に対応するプロジェクト従事者が増えてきている、という内容です。それがうまくいくためのベースにあるのは、プロジェクト・チーム内におけるコミュニケーションと信頼関係です。

また、全体の傾向をみても、学習を続け、自分だけでなく、メンバーに対しても教育をしているリーダーというのは、新しい思考や手法を進行中のプロジェクトにも柔軟に取り入れ、進化しているようです。

著者プロフィール

中村 亜子
中村 亜子

株式会社富士ゼロックス総合教育研究所

2006年 富士ゼロックス総合教育研究所に入社。前職での海外赴任経験を活かし、富士ゼロックスグループ海外子会社の営業向け教育の経験を経て、現在は主にプロジェクトマネジメント分野のSME(Subject Matter Expert)として教育プログラムの企画、設計・開発から導入のコンサルテーションまでを行なうと同時に、アセスメントを活用したソフトスキル研修にも携わる。米国PMI認定PMP、MBTI認定ユーザー、HOGAN ASSESSMENT認定フィードバック・コーチ、PMI日本支部 PMタレントコンピテンシー研究会メンバー。

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