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【シリーズ】PMが磨くべき対人関係のスキル⑤【最終回】

筆者は、某メーカーのシステム部門に採用されてから、紆余曲折を経て、現在は人材育成や組織開発の仕事に携わっています。様々な失敗を経て、今思うのは、もっと早く対人関係のスキルや知識を知っておけばプロジェク
トや仕事もよりよい成果が出せたのではないかということです。

優秀な社員と普通の社員の違いとは

数年前に某ITベンダーの社長さんから聞いた話です。その会社は社員のモチベーションとマネジメントの相関を見える化するというユニークな取り組みをされていました。その過程で優秀な社員とそうでない社員の違いが分かったそうです。その違いは、モチベーションが下がったときの立ち直りの早さにあるというのです。優秀な社員は概ねモチベーションが高い人が多いそうです。だからといって、どんな時もモチベーションが高いわけではなく、上がったり下がったりするそうです。そして優秀な社員の共通の傾向として見られたのが、モチベーションが下がったときから戻るまでの期間が短い、すなわち立ち直りの早さだそうなのです。ちなみにモチベーションが比較的高い社員の方が、一旦下がってしまうと回復しにくかったりするそうです。

立ち直りの早さの裏にあるもの

立ち直りの早い人は、気持ちの切り替えの早い人と言えるのでしょうが、その早い切り替えを可能にしている理由のひとつに物事の解釈(起きた事をどう捉えるか)があるのだと思っています。例えば、納期まであと1週間という事実に対して「あと1週間しかない」と捉えるか、「あと1週間もある」と捉えるかということです。その捉え方=解釈によって、その後の思考や行動が変わってくることは容易に想像がつくと思います。

解釈を選択していますか?

ここでのポイントは、「本来、どう解釈するかの選択肢は無数にあり、選択は自由である」ということなのです。(考え方については、マーティン・セリグマン博士の「オプティミストはなぜ成功するか」を一読されることをお勧めします)多くの場合、自分が特定の解釈を無意識のうちに選択してしまうのです。そして無意識にした選択=事実と捉えてしまうわけです。(今、この記事を読まれて「たしかに」と思ったか「嘘だろう」と思ったかも、実は解釈を選択しているわけです)先ほどの優秀な社員の方は、意識的か無意識的かは分かりませんが、モチベーションが上がるような前向きな解釈を選択されているのだと思います。

七転び八起き人形のように立場を取りつづける

自分のモチベーションが上がるような解釈を意識的に選択する、という事を、‘立場を取る’いう表現をします。立場を取るとは、ある一定の解釈を選択し続けるということです。例えば、どんな事も「学びの機会だ」、「現状を変えていく機会だ」と前向きに解釈し続ける。それは決めてやり続けることに他なりません。そしてこの立場をとり続けることが大切なのではないかと思っています。まるで七転び八起きする人形がただ起き上がるのと同じようにある立場をとり続ける。人形はいちいち考えて起き上がっているわけではなく、ただ勝手に起き上がるのです。それと同じように、ただある立場をとり続ける。ですので、日々いろいろな事があり、モチベーションが下がったりする時に、今の自分の状態に気がついたら、例えば肯定的な解釈をする事を選択し続ける、その立場をとり続けることが大切なのです。

立場をとり続けるためのセルフ・コーチング

自分をよりよい状態に持って行くために、セルフ・コーチングリストを作り、一日一回見ることをオススメします。セルフ・コーチングとは、いわば、自分への問いかけです。これは筆者がやっていることですが、下記のような問いかけをつくり、手帳やスマホで定期的に見られるようにしておきます。そして見ながら内省をすることで、立場をとり続けることが容易になるのです。

<例>
朝の問いかけ
「今日はどんな1日にしたいのか、そのために何をするのかしないのか」
「周りの人にどんな貢献をするのか」

迷った時や感情的になったときの問いかけ
「(一時的な感情や否定的な解釈に振り回されずに)本当はどうしたいのか、本当に得たいものはなにか」

終わりの問いかけ
「今日学んだ事はなにか」
「今日一日どんな成長をしたか」
「感謝したいことは何か」

大切なのはどんな態度で臨むか

どんな対人関係スキルも、出来事をどう解釈しメンバーや関係者とどう向き合っていくか、選択するのは共通していると思っています。リーダーシップにしてもメンバーを人として見るのか部品として見るのか、ネゴシエーションでも相手を敵とみるのか仲間で見るのかで結果は大きく違ってきます。立場を取るということは、知識やスキルとは違います。それは物事に臨む際の態度です。そして態度は、今、この瞬間から変えられます。決めてやる、ただそれだけです。出来なかったらまたやる、その繰り返しです。

PMが磨くべき対人関係のスキル、これまで5回シリーズでお伝えしてきましたが今回が最後になります。
これまでお付き合いいただきありがとうございました。

著者プロフィール

大坪 タカ(おおつぼ たか)

富士ゼロックス総合教育研究所 契約講師 資生堂において、ITの企画開発から運用まで幅広く経験。その後、ITコンサルティング会社を経て独立。IT企業をはじめ、多くの企業のリーダー育成や組織変革に携わる。PMP、交渉アナリスト、ORSCC(CRRGlobal認定システム・コーチ)などの資格を保有。関係性開発協会の代表理事も務める。

※本コンテンツは、株式会社富士ゼロックス総合教育研究所配信のメールマガジン 「PM MASTER’S NEWS<2017年2月号>」に掲載されたものです。

(2017.2)

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