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【シリーズ】PMが磨くべき対人関係のスキル④

筆者は、某メーカーのシステム部門に採用されてから、紆余曲折を経て、現在は人材育成や組織開発の仕事に携わっています。様々な失敗を経て、今思うのは、もっと早く対人関係のスキルや知識を知っておけばプロジェクトや仕事もよりよい成果が出せたのではないかということです。

第四回目は「チームを導く」についてお伝えします。

あなたのプロジェクトはチーム、それともグループ?

プロジェクト推進する組織をチームと呼びます。本来チームとは、同じ目的目標のために協力しあう組織を指すのですが、実態としてそうなっていないチームも多いのではないでしょうか?プロジェクトの目的目標をよく知らない、知っていてもどこか他人毎になっている、ましてや他のメンバーの事もよく知らないとなると、実態は‘チーム’と名前がついたグループそのものです。
もしプロジェクトが‘グループ’であるとしたら、メンバーに協力しあう意識や目的目標に対するコミットメントがなくても当然のことと言えます。メンバーをアサインして、役割と責任を与え、それでチームになるわけではないのです。開発やマネジメントにプロセスがあるように、チームを導くにもチームのプロセスを知り、意識的に取り組んで行くことが必要です。

最初の一歩はよい雰囲気づくりから

まず以下の項目をチェックしてみてください。

□ メンバーの顔と名前が一致している。
□ メンバー同士が、お互いの人なりや背景を知っている。
□ 挨拶や雑談などが自然に行われている。
□ 立場を超えてお互いが率直に物を言えている。
□ お互いが仕事内容を理解しあえている。
□ 飲み会等イベントなどでお互いの懇親を図る機会が定期的に設定されている。
□ 仕事へのビジョンや想いが共有されている。
□ 仕事の進め方や風土に関して定期的に話し合いが行われている。

もし該当項目が4つ以下の場合、プロジェクトが‘チーム’として機能しているのかどうか見直した方が良いかもしれません。
チームづくりとは、一言で言えば、プロジェクトを他人毎から自分事にしていくプロセスとも言えます。そのためには、疑問や不満も含めて‘言いたいことが言える’事が大切です。そしてさらに‘言いたいことが言える’ためには、自分がチームの一員であるという所属感覚と、言いたいことを言っても受け止めてもらえるという安心感が必要なのです。この所属感覚と安心感があるからこそ、本音や意見が出てくるのです。本音や意見が肯定的でも否定的でも、それがしっかり受け止められることが‘自分のチーム’につながっていくのです。

よい雰囲気づくりを仕組みにする

こうしたよい雰囲気作りのための懇親の場(例えば飲み会など)を設定する事は、よくある話ですが、一回きりでは仕方ありません。朝会、誕生月会を企画する、ランチを一緒に取る、オフの場でのイベントなど、よい雰囲気づくりにつながる小さなイベントを定期的に行っていくことが大切です。筆者の体験ですが、20代後半に仕事上ハードな状況が続き、肉体的にも精神的にも辛かったことがありました。思い返すと、それを乗り越えられた理由の一つにあったのが、‘昼食を必ず皆で食べに行く’という習慣でした。どんな時にも必ず誘われ、皆でランチに行くのです。ランチを食べながら愚痴や不満も含めてたわいもない話をするのですが、それによって孤独感を味わうことなくなんとか乗り切ることができたのではないかと思っています。逆に30代の時に常駐していた客先では、チーム内で親しい人もおらず、体調不良も重なってランチも一人でたべる状況で、客先に近いホテルに半年近く滞在ということもあり、精神的に孤独肉体的にもとても辛かったことも覚えています。

仕事の進め方や関わり方の理想を語り、馴れ合いを防ぐ

ではよい雰囲気づくりを行えば‘良いチーム’ができるかというと、実は違います。特によい雰囲気づくりが行われると、場合によっては単なる‘仲良し’や‘馴れ合い’になってしまうことも多いからです。そのためには、プロジェクトの目的目標とは別に、仕事の進め方や関わり方の理想をお互いに語ることが大切になっていくのです。プロジェクトに明確な目的目標があるように、チームにもそれぞれ個人の理想があるのです。プロジェクトであれば、それは上から提示されますが、仕事の進め方や関わり方の理想は、自分達で作るものなのです。そしてその理想は個人によって違うのですが、それをお互いが知っているということが大切なのです。
さらに付け加えると、理想を話すと同時に‘対立が起きたときにどうするか’についても話す必要があります。なぜなら、チームの発展過程で多かれ少なかれ対立が起きることが多いからです。対立は悪い事ではありません。むしろ対立が起きたときにどう対処するかが曖昧になっていることがまずいのです。そしてこうした理想を語る時間を定期的に取ることも大切です。なぜなら時間の経過に伴って、進め方の理想や関わり方の理想も変化していくからです。開発プロセスのフェーズ毎などに、必要だと思うタイミングで話し合っていく事が大切です。

人は理屈では動かない。感情で動く

こうした雰囲気作りの仕掛けや仕事の進め方や関わり方の理想を語るという事を始めようするときのポイントは、‘ただやり始める’ことです。メンバーにどのように説明するかということを質問されたりすることがあるのですが、説明などいりません。もしあなたがリーダーであれば、リーダーの権限を使ってやり始めることです。人は理屈を知りたがりますが、理屈を知っても納得するだけで動きません。仮に動いたとしても長続きしないことが多いようです。人が動くのは‘感情‘です。特に’楽しいかどうか’です。楽しいからこそ長続きするのです。そのためには、まず‘自分自身が楽しいと思う事から始める’ことです。ぜひ小さな事から雰囲気作りや理想を語ることを始めてみてください。

次回は最終回「優秀なPM」になるためのポイントは‘態度’である、をお伝えします。

著者プロフィール

大坪 タカ(おおつぼ たか)

富士ゼロックス総合教育研究所 契約講師 資生堂において、ITの企画開発から運用まで幅広く経験。その後、ITコンサルティング会社を経て独立。IT企業をはじめ、多くの企業のリーダー育成や組織変革に携わる。PMP、交渉アナリスト、ORSCC(CRRGlobal認定システム・コーチ)などの資格を保有。関係性開発協会の代表理事も務める。

※本コンテンツは、株式会社富士ゼロックス総合教育研究所配信のメールマガジン 「PM MASTER’S NEWS<2016年11月号>」に掲載されたものです。

(2016.11)

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