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チームになるには

コンサルティング統括部 コンサルティング4部 リサーチコンサルティング課長 西山 裕子

サッカーワールドカップでの日本代表の活躍は、記憶に残る印象的なものが多い。試合での戦いぶり、勝負に挑むプロフェッショナルな姿勢はもちろんだが、チームとしての誇りや共に闘うメンバーへの思いやりにも感動させられた。「チームが一つになって戦うことが、大きな力になると感じた。」「最後の最後まで仲間を信じられたのが良かった。」「このチームの強みはチームワーク。出ている選手だけじゃなくて、出ていない選手のサポートが本当に素晴らしかった。」「このチームでもっとやりたかった」といったコメントに心を打たれた方も多いのではないだろうか。

組織で働く私たちも、チームワークが大事だと当然のように思ってはいる。一緒に仕事をしている人と人とがチームとしてまとまり、このチームでがんばろうと思うようになるには、そしてチームとして成果を出していくには何が必要なのだろうか(注)。

インデックス



1.チームワークの一つのかたち

戦略実行に対する現場のやる気の状況を調べたいというテーマをいただいたことがある。全社員向けに定量調査を実施し、「戦略実行に向けて、現場のモチベーションは高まっていますか?」という質問を設けた。その結果から、モチベーションが高いチームと低いチームで、マネジャーとメンバーそれぞれにヒアリングを行った。内容はチーム内での仕事の進め方、コミュニケーションの質や量、マネジャーとメンバーのかかわり方などである。なお、ここでのチームは、実際の組織の「課」に相当し、マネジャー=課長で、メンバーは数名の規模である。

モチベーションが高いチームでは、入社2年目の営業担当者から次のような話を聞くことができた。 「提案準備をしていて、作成した資料の確認をマネジャーにお願いしたんですが、返ってきたのは、『この提案は、本当にお客様のためを考えた内容になっているのか?もしそうならば、お客様にもそのことが分かるように表現されているのか?君はこのお客様にどういう価値を提供したいんだ?』という問いかけでした。マネジャーの問いかけはもっともなことでしたが、資料のどこをどう直せとは教えてくれませんでした。自分がどうしたいかと言われても、途方に暮れてしまって、一人で頭を悩ませている時にさりげなくサポートしてくれたのは、7年目の先輩でした。その先輩は、自分が今担当しているエリアや業種の経験も豊富で、普段から本当に頼りにしています。提案書についても、お客様にとってのメリットや競合との違いをこんな風にまとめてみるといいといった具体的なアドバイスをくれました。それでいて、手を出すことはないし、こちらの意見も汲んでくれます。・・・お客様に提案した時の様子や反応を報告すると、商談を進めるために、次に何をしたらいいかを一緒に考えてくれました。またマネジャーにも報告すると、すぐにサービス部門の支援を得られるように連絡を入れてくれました。・・・」

マネジャーにもヒアリングしたところ、「日頃から細かい具体的な指導よりも、『お客様のためになっているか?』といった本質的な問いかけを心がけている。」と話していた。また、「忙しい現場では、会社のビジョンや仕事本来の目的を忘れがちで、月度の売上目標の達成にだけ執着してしまいそうになる。メンバーが立ち止まって、自分の仕事の意味やチームの仕事の意味を、お客様の立場で考える瞬間を作ることを意識している。会社のビジョンである『お客様のため』を、自分の仕事を通じてどう実現するかを考え、人に説明できるようになることが重要だと考えている。」とも話していた。

このマネジャーは目標達成のための施策の本質的な意味合いについて正面から話し合う姿勢を見せている。そしてメンバーの納得感を引き出すために、任せっきりにせず、個人の目標や合意したプロセスの実行度を良い意味で追求し、そのことが実際の成果につながっているという成功体験、達成感を味わわせるような フィードバックを忘れていない。

さらに、このマネジャーは、それ以外にもさまざまな工夫を施している。一つは、具体的な指導は、先輩にあたる中堅社員に任せていることである。これは、中堅社員が自分の培ってきた仕事経験を生かしながら、後輩指導という経験をさらに積むことで、自分の仕事の仕方を他者に伝えられるように整理したり、どこがポイントだったかをふり返ったり、また一つ上のレベルから仕事の意味を考えたりするチャンスだという。後輩指導が中堅社員にとっての成長機会となっている。そして、後輩が成果を達成できたときには、サポートした中堅社員もまた、自分で達成したときとは一味違う達成感を感じると語っている。 また、新人や若手には、経験が浅いなりに自分の力で考えてもらいながら、安心して仕事に打ち込める環境作りを意識しているという。実際、若手からは、自分の仕事振りを見ていてくれる人がいる、少しずつだができることが増えてきた気がするといった声が聞かれた。仕事への自信とチームに貢献できているという実感が生まれ、良い循環に繋がっているようである。

その他、このチームでは、競合への危機意識が高く、現状に安住することなく一つうえのレベルを目指しているような発言も多くあった。 また、次のような発言が印象に残っている。メンバーからは、「厳しいけれど、やりがいがある」、「今のマネジャー、先輩とともにがんばりたい、自分も成長したい」、マネジャーからは、「いい会社にしよう。そのために、人を育てようという気持ちがある、自分はそのためにやるべきことをやっているかといつも考えている」というものである。メンバーがチームとしての一体感ややりがいを実感している様子、また、マネジャーが仕事を通じてメンバーの育成を絶えず意識している様子が伺われる。チームワークの一つのかたちがここにはあるようだ。

2.チームになるために必要なこと

戦略実行に向けたモチベーションが高いチームには何があるのだろうか。上記の例では、 ①ビジョンと一貫した本質的な問いかけ ②メンバーの特性や経験レベルに応じたチーム内での役割の設定が効果的に機能しているようだ。 ①は単に直近の目標の進捗ではなく、お客様に向かう姿勢をメンバー一人ひとりに考えさせるような本質的な問いかけが、各自が仕事の意味をふり返るきっかけとなって定着している。②は具体的に個人の経験や特性を踏まえて、納得を上手く引き出した目標を展開し、新人、若手、中堅、それぞれの仕事経験のレベルに応じたチーム目標の分担と、メンバー間の指導・育成機会が提供されている。 そして、結果として、一人ひとりがチームでの存在意義を見出し、メンバー相互の成長を支援しあい、チームとしての成果達成、会社としての戦略実現に貢献しようという雰囲気が醸成されている。

逆に、戦略実行に向けたモチベーションが低いチームでは、我々の調査では、上記のような本質的な問いかけはほとんど見られず、日常的にも、週度、月度の会議等でも、目標の結果管理が中心で、活動のプロセスを明らかにして良いところや悪いところを共有するような話し合いも見られなかった。特に目標が達成していない場合は、個人の責任を追及する叱責に近いフィードバックがあった。チーム内でカバーしあうような雰囲気ではなく、みんな自分のことだけで精一杯な様子や、他のメンバーへの関心が薄い様子がうかがわれた。極端にいえば、日々の自分の仕事と、会社の戦略や方針とは別物になっていた。メンバーからは自分の目標さえ達成すればそれでいいだろうし、特に問題もないはずだ。細かいことをあれこれ言われたくないといった発言もあった。

同じ会社にあって、ほぼ同じミッションを担う営業チームにおいても、戦略実行のモチベーションが高いチームと低いチームには大きな違いがあった。とくにその鍵は、日常的なコミュニケーションを通じていかに戦略や仕事の意義を伝え考えることができるかと、メンバー一人ひとりがチームで自分の存在意義を見出せているかどうかにあるようである。

3.これからのチームづくり

ここで紹介したモチベーションの高いチームには、マネジャー、中堅、若手と異なる年齢構成のメンバーがバランスよく揃っていたが、これもよいチーム状態を生んでいる要因の一つかもしれない。(チームの人員構成は、40代前半の課長、20代後半~30代半ばの中堅社員が3名、20代半ばまでの若手が4名である。) 経験レベルに応じてメンバー同士が互いの仕事を支援しあい、マネジャーは一つ上の視点から問いかけ考えさせるという構図は、メンバーの年齢構成によっては 難しいものかもしれない。バブル崩壊以降の採用抑制は、社員の年齢構成をいびつなものにし、40代、50代に比べ、20代、30代が極端に少ない。今後は、マネジャーよりも年長のメンバーや中堅社員だけで構成されているチームが多くなることだろう。そのようなチームにおいても、上記にあげた「①ビジョンと一貫した本質的な問いかけ、②メンバーの特性や経験レベルに応じたチーム内での役割の設定」は効果的だろうか。この点は今後も事例を積み重ね検証していく課題であるが、一つの仮説として、年齢や役職にとらわれずに、チームのなかで誰かが①本質的な問いかけを行い、一人ひとりが経験や専門性を生かして②のようなチームでの役割を見出すことができれば、やはり同様に効果的ではないかと考える。 これからのチームには、いびつな年齢構成を前提として、中堅以上のメンバーにそれまでの仕事経験を活かしマネジャーと連携してチームを活性化していくため の役割を期待し、そこにやりがいを見出してもらえるような取り組み(何らかの働きかけやしくみ)が、求められているのではないだろうか。

 

【注】
組織行動論ではチームとグループを異なるものとして定義しているが、このコラムでは、理論での厳密な定義を離れ、一般的に使われる「チーム」「チームワーク」という言葉の範囲で検討を進めている。
上記の定義として、例えば以下のようなものがある。「チームは、共通の目的と目標、その達成のプロセスを共有する多様なメンバーの集合体」である。「グループは、メンバーが各自の責任分野内で業務を遂行するのを助け合うことを目的に、主として情報を共有し意思決定を行うために互いに交流する集団で、その 業績は個々のメンバーの、貢献の総和にすぎない」。それに対して、「チーム」は「協調を通じてプラスの相乗効果(シナジー効果)を生み、個々人の努力は、 個々の投入量の総和よりも高い水準をもたらす」
(1997,ステファン・P・ロビンス著、高木晴夫監訳、『組織行動のマネジメント』、ダイヤモンド社)

(2010.8.20)

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