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組織の強さと成長を支える「思い」の共有

1.企業が強く成長し続けるために、何が求められるのか

企業を取り巻く市場、競争環境は、今や当たり前のように進むグローバル化、技術革新をはじめとしたさまざまな影響を受け、業界の垣根を超えて大きく変化しています。企業は、変化と多様性に満ちた不確実性の高い環境のもとで、機敏に舵取りをしながら戦略を実行し、成果を生み出し続けることが求められています。今までの経験則や成功体験は必ずしも絶対的なものではなく、市場の変化やお客さまの要求の高まりに臆することなく挑戦し、変革し続けなければなりません。

しかし、変化に対応するだけで手いっぱいとなってしまう状況が続けば、組織が本来持っていた強みや基軸を見失い、その組織らしい力を発揮することはできなくなってしまうのではないでしょうか。環境の変化に対応しながらも、組織として強く成長し続けるためには、今こそ、組織の本質的な目的や、存在価値が何であるかに立ち戻り「社会の中でどのような存在であり、どのような価値を創出しようとするのか」や、「組織に属する一人ひとりはどのようにあるべきなのか」などの組織として大切にしたい思い(以下「組織の思い」)に対する認識を、改めて組織の中で揺るぎないものとすることが重要であると考えます。

2.「組織の思い」が浸透する組織、浸透しない組織の違い

組織に属する一人ひとりはさまざまな思いや価値観を持っています。しかし、個人にとって大切にしたい思いが「組織の思い」に重なり、共感できることを見 出すことができれば、自分の仕事への意義や使命感を感じ、困難な状況や不確定な状況であっても乗り越えることができるエネルギーや行動にもつながってくる でしょう。さらに、お互いの利害や意見が対立する場面があったとしても、「組織の思い」を共通の基盤とできていれば、目指す方向性に向かうスピード、結集力を高めることができるでしょう。それが、「組織の思い」が浸透している状態であると考えます。

しかし、そのような状態は簡単に実現することではなく、企業を取り巻く環境変化にともない難しさが増しているのではないかと感じます。私がうかがうあるお客さまでは、「グローバル化の進展とともに、社員一人ひとりの考え方や価値観が多様化し、企業の伝統や価値観を一方的に押し付けることが必ずしもよいとは思えなくなった。」とのお話をお聞きしました。また、他のお客さまからは、「先輩から後輩、あるいは上司から部下へ経験を伝える文化が途絶えて、私は私、という考え方をする人が増えた。」というお話もしばしばお聞きします。個人の働き方や価値観も変わってきた今日では、一人ひとりの仕事や組織に対する思いはますます多様なものとなり、組織や職場から与えられる価値観や考え方を、心から共感できるものとしては受けとめられないことも多々あると考えられます。

また、「業績目標の達成に追われて、それぞれが担当する役割を果たすことにいっぱいである」という状況は、どの企業でも起こり得ることと思います。一人ひとりの思いを重ねることなく、数値としての成果だけを追い求める組織となってしまうとすれば、一人ひとりの思いの向かう方向性はバラバラなものとなり、 組織が長期的に目指したい方向性に向かう基盤は脆弱なものとなってしまうのではないでしょうか。

3.「組織の思い」の浸透で大切なこと

「組織の思い」が浸透した状態となるために、私が何よりも重要だと思うことは、「組織の思い」が自分とは遠く離れたあるべき理想ではなく、自分の思いや経験に照らして共感できる重なりを見出すことができること、さらに一人ひとりの思いを重ねて、皆の思いへとつなげることができることです。

思いを重ねることとは、組織内のあらゆる立場の人が、「何のために働くのか」、「どのように働いていきたいのか」などのそもそも大切にしていた自分の思いに立ち返り、その思いを共有することから始まると考えます。また、一人ひとりの思いは、将来実現したい夢だけはなく、今までの経験してきた場面の中にもあるはずです。自分の思いを実現できたできごと、あるいは叶わなかったできごとを思い出し、「どのようなできごとがあったのか」、「そのときどう思っていたのか」など、具体的な経験と、その背景にある思いを共有することによって、お互いに共感できる「思い」の重なりが見えてきます。

対話を通じてお互いに共感できる思いがみつかれば、皆の共感する思いが集まり、さらに「組織の思い」につながっていきます。そこから初めて、「今までの組織の何を大切にしていきたいか」、「何を変えていかなければならないのか」、「これから何を実現できるのか」をともに考え、心からの思いとして将来の組織の成長を目指すことができる基盤ができると考えます。

企業を取り巻く環境がさまざまに変化し、そこで働く人の価値観はさまざまであるからこそ、組織の思いと個人の思いの重なりが共有化されてこそ、組織の真の強さが生まれてきます。組織として永続的に社会にとって意義ある存在であり、生み出す価値をさらに高め続けるために、これからの企業や職場には、一人ひとりの思いを重ね合わせた「組織の思い」を共通基盤とする努力がさらに求められているのではないでしょうか。

(2011.4.26)

著者プロフィール

蔭山 明子
蔭山 明子

株式会社 富士ゼロックス総合教育研究所 マーケティング推進部 Societal Leaders プロジェクト Society-Inプロセスデザイナー

富士ゼロックスでの営業・マーケティング・モチベーション開発企画の経験を経て、2007年に富士ゼロックス総合教育研究所に移る。リサーチ/アセスメントの企画開発や、企業の理念/ビジョン浸透、部門間連携強化などの組織開発のテーマでのコンサルティングと実行支援を行っている。現在は、企業の垣根を越えた、社会的な関係性からの価値創出を実現するための基盤/プロセスづくりに取り組んでいる。

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