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『ママ・マネジャー』が身につけている5つの能力

コンサルティング1部矢倉亜子

目次

はじめに

『優秀なマネジャーが必要だ』-経営者であれば誰しも一度は胸に抱くことでしょう。ところでどういうマネジャーを“優秀”だと考えているのでしょうか。

日本が抱える大きな問題として、少子高齢化による労働者の減少と多様化があげられます。労働者の減少は、労働者一人当たりの負担(労働時間・労働量)を確実に増やします。これまでと同じ働き方を続けると労働者が疲弊し、生産性が落ちることが予想されます。日本政府は解決策としてワークライフバランスを推進するよう企業に働きかけていますが、「長く会社にいる社員ほど会社に貢献している」という日本企業の価値観は根強く、短時間労働による生産性向上に成功しているとはいえない状況です。

派遣・契約といった労働形態の異なる雇用者や、再雇用を活用した定年後のシニア社員が増加し、いわゆる「年上の部下」が増えています。職場には、多様な価値観を持ち多様な働き方をする人材が増え、業務遂行上円滑なコミュニケーションが取りづらい状況も発生しています。

こうした状況を考えると、“優秀”なマネジャーに求められる資質とは、次のようなものになるでしょう。

では、どうすれば短時間労働の中での確実な成果を、しかも多様な人材をマネジメントしながら創出できるような“優秀”なマネジャーを育てることができるのでしょうか。育てる必要はないというのが、私の考えです。というのは、既に存在する可能性があるからです。そしてその可能性を子育て中の女性、すなわちママ・ワーカーに見出すことができます。なぜ、ママ・ワーカーなのでしょうか。ヒアリング調査を通じて得られた考えをお伝えします。

ママ・マネジャーへのヒアリング

ここでは、既にママ・マネジャーになっている3名の女性が登場します。彼女達への質問は共通しています。「育児・子育てでの経験で、マネジメントに活かせたことを教えてください。」です。

【子供向け教育サービス事業 部長】

自分一人では仕事はできない、周りに助けてもらっているという意識が芽生えました。そして、我慢強くなりましたね。子供は、私の都合など考えず無理を言ってきますから。また、短い時間で最大限の成果を上げようという意識が高くなりました。

仕事の進め方も変わりました。例えば子供を迎えに行かなければならないことは当然として、「子供が発熱した」等、突然仕事を中断して帰宅しなければいけないこともあり、仕事を適切に配分し、メンバーにいつでもお願いできるように情報共有するようになりました。それ以外にも、短時間で最大限の成果を上げるための仕事のやり方を検討し続けています。

いろんなヒントも浮かびました。うちの会社には保育事業はあったのですが、学童事業はありませんでした。保育施設を利用している共働きの家庭をみると、子供にある程度投資していることはすぐにわかりました。「少しお金はかかっても子供を夜まで保護できて、更に勉強や習い事まで見てもらえる学童があれば…」と思っている家庭は、少なくないと感じました。そこで学童の事業化を思いつき、今立ち上げているところです。そういう点では事業化のヒントももらえましたね。 【IT企業に勤めるSE課長】

子供って、言葉がうまく使えないじゃない。宇宙人みたいなものなので。職場の部下は言葉が通じるだけまだまし、と思えるようになったのよ。

私は他のSE課長より仕事に割ける時間が圧倒的に少ないの。私の勤務時間内での処理が難しい業務は部下に割り振る必要があるでしょ。だから、部下の様子をよく観察していたの。「A君はあのプロジェクトが先日終了したから、これくらいの業務量をお願いしても大丈夫かな」とか。その上で仕事をじゃんじゃん部下に任せているの。もちろん、部下から反発もあるけど、結果的には業務的にも彼らの成長にも結び付くので結果オーライだと思っています。

【航空会社 ダイバーシティ推進室長】

ママだからとあまり意識したことはありませんでした。時には泣き続ける子供を預けて仕事に出かけたこともありましたね。私の両親は近くには住んでいますが、できるだけ自分たちでやっていこうとパートナーとは話をしていました。

子供が小さいときには勤務時間が短くなるので、どうしても周りに迷惑をかけることが多かった気がします。そのためだからなのかはわかりませんが、いろいろな方に根回しをすることを意識するようになりました。

弊社は女性、ママでも高い比率で管理職になっています。そんな風土もありますので、周りからの支援は得やすい環境なのかもしれません。 ママの中でも管理者になる方もいれば家庭重視の働き方を続ける人もいます。自分自身もママというマイノリティという立場で多様な働き方を支援していきたいと思っています。

ヒアリングからの考察

3名の方々のヒアリングから、ママ・ワーカーが“優秀”なマネジャーとして活躍できる可能性があることがわかります。それは以下の5点にまとめることができます。

 仕事と子育ての両立を目指すため、ママ・ワーカーはいやがおうにも、時間に対する意識が高まります。ですが、「時間がないからここまででいいや」とあきらめはしません。時間的制約を認めた上で、以前の自分以上により高い成果を創出しようとするマインドを持っています。優秀なマネジャーには必要不可欠なものです。

時間に対する意識を高めただけでは、大幅な生産性向上は望めません。重要なのは、仕事のやり方も見直していることです。自分だけでは限界があることも認識しているので、「人を通じて成果を創出し、同時に育成する」という、優秀なマネジャーには欠かせないスキルを自然と身につけるのです。

ママである以上、子供にまつわる突発的な事象には、重要な業務中でも即座に対応せねばなりません。そういう体験を通じて、リスクへの対処方法を事前に検討するようになります。突発的なことが起こっても周囲の人たちに支援してもらえるよう、日頃からの信頼関係の構築や根回し、粘り強い交渉、業務の情報共有について意識して行っています。これも優秀なマネジャーとしての基本でしょう。

ママ・ワーカーは日頃時間的制約のある働き方をしているので、同じような制約を持つメンバーの背景を理解しやすくなります。また、業務上助けてもらっているという意識があるので自然とメンバーを尊重するようになります。これはマネジャーとしてもそうですが、人として重要なことです。

子供向け教育サービス事業の部長へのヒアリングからヒントを得たことです。この部長は、「学童」に「ビジネス」のタネを見出し、事業化を成し遂げました。「小学生の子供を持つママ」というマイノリティの視点から生まれたアイデアです。多様な視点で、あるいは多様な立場から考えることは、マネジャーに必要な思考様式です。職場のマイノリティだからこそ、その重要性を実感できるのです。

 

最後に

もちろん、ママ・ワーカーはこのような素晴らしい人材ばかりとは限りません。職場では、こんなことを言う人もいます。

時短で働いているから、その日中に終了すべき業務が終えられないですね。その代わり、僕が肩代わりして残業し、完了させています。やってられないですよ。
私だって子供がいてここまでやれるんだから、あなたでもやれるでしょ、って口癖のように言われます。あなたと私は違うのよ、って言いたいですよ。
仕事を全部自分でかかえちゃって…。納期直前で僕に相談されても、困りますよね。

こういう側面は確かにあります。ママ・ワーカーも多様なのです。このように光と影はありますが、ママ・ワーカーの光の部分に目を向けるべきです。

冒頭で述べたように、日本は「短時間で確実な成果創出を、多様な人材を活用することで成し遂げる」という大きな課題を掲げています。これまでに述べてきた5つのマインドやスキルはこの課題を達成するために有効です。ワークライフバランスを通じてこれらの能力を身に付けているママ・マネジャーは、企業にとって大いに活用できる人材なのです。

(2016.03.28)

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