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ホメコツ~上手く褒めるためのポイント~

経営企画部
加藤利恵

目次

はじめに

前回のコラム「ホメは人の為ならず~褒めることの効果~」を読んだ方から言われました。「褒めて学校の成績が良くなる実験結果があるっていうことは、メンバーを褒めればうちの部の成績も上がるかもしれないな」「褒めることで、自分の評判が良くなるなんて意識してなかったよ。」「褒めると気分が良いけれど、脳に良い効果があったなんて驚きだよ」などです。しかし、口をそろえて「でも、なかなか褒められないんだ」と最後には言うのです。しかも、「どう褒めればよいかわからない」「褒めたのに、からかっていると思われて怒られた」と言う方もいました。確かに、私も友人に「今日も綺麗だね~」と言っては、信じてもらえないどころか「心がこもっていない」と怒られています。褒めることは良い、とわかっていても褒めることはなかなか難しいのが現実です。

どうすれば、上手く褒めることができるのでしょうか。今回は、褒めるコツについて考えていきます。

褒めない文化!?

江戸時代の儒学者である貝原益軒によって書かれた教育論『和俗童子訓』(※1)には、「人に三愚あり。我をほめ、子をほめ、妻をほむる、皆是愛におぼるる也」と書かれています。日本で最初の体系的な教育書といわれている同著には、褒めると人は高慢になってしまうので褒めるとことは愚かなことだと書かれています。江戸時代には褒めない教育が施されていたようです。

さらに、日本は島国ということもあり、同じ考え方や感覚の同質性が育まれてきたと言われています。その結果、暗黙の了解や行間をよむ、以心伝心という文化があるようです。わざわざ言わなくても目線や態度で伝わるだろうという考え方は、現在も根付いているように感じられます。

最近では、「ピグマリオン効果」などの褒める効果に関する海外の調査結果が広く知られるようになり、「褒めることは良いこと」として社会へ浸透しつつあります。しかし褒めない文化や言葉で伝えない習慣はそう簡単にはかわりません。このことが褒めることが難しい原因のひとつかもしれません。

褒めの基本

それでは、具体的に、いつ(When)、何を(What)、どうやって(How)褒めればよいかということについて考えていきましょう。

1. いつ褒める?今でしょ!

「よしっ、褒めるぞ!!」と思っても、最初につまずくのは、いつ褒めればよいのかがわからないということです。「あれ?さっき褒めるべきだったんじゃないかな?」なんて後から思うことはありませんか。たとえば、初めて受注した社員がいたとします。その人とは毎日顔を合わせているにもかかわらず、1週間程経ってから「さすが、○○さん、難しい案件にも関わらずよく受注できたな。」と声を掛けても、受注した喜びが薄れつつある時では効果が半減するどころか、何を褒められているのか全くわかってもらえない可能性すらあります。

褒めるということは、褒めたいことがあった時に褒めることが大切なのです。水族館のイルカショーを思い浮かべてください。ジャンプができたイルカに成功の都度お魚を与えています。私たち動物は、行動に対しての報酬を受けると脳内にドーパミンが分泌され、再びドーパミンを得るために頑張ろうとします(※2)。ドーパミン分泌には、自らの行動と褒められたという報酬に関連が感じられなければならないのです。だからこそ、後回しにしないですぐに褒めることをお勧めするのです。

2. 何を褒める?あなただけがわかるところ!

冒頭でもお伝えしているとおり、私も友人に「綺麗だね」と褒めたつもりが怒られたことがあり、何を褒めたら良いのかがわからない1人です。「対人認知の原理」の5要素といわれているものがあります。①外見、②容姿、③体格、④第一印象、⑤評判です。これらは周囲から認められやすく、本人も自覚しやすいため、この5要素を褒めたとしても、相手にとっては「既にわかっていること」なのです。

その褒め方が悪いというわけではないのですが、「そんなわかりきっていることを今更言うなんてからかっているのかしら?」と誤解をされてしまう可能性があるのです(※3)。私が怒られてしまった理由がわかりました。彼女が綺麗なことは誰もが知っているため、褒めたことにはならなかったのです。人を褒める場合には、この5要素に含まれない部分を褒めることが大切なのです。例えば頑張ったプロセスや以前とかわった部分など、他の人からは見えないけれどあなただけがわかる部分のことです。あえて他の人にはわからない部分を褒めてみてください。

3. どう褒める?人づてで効果倍増!

いよいよ次はどう褒めるか、ということです。今更ですが、褒めるのってそもそも照れくさいことですよね。照れくさいから、と褒めることをやめてしまったことがあるのではないでしょうか。

そこであえて、本人でない人に褒めたいことを伝える、という褒め方をお伝えします。本人へは直接言いにくい褒め言葉も上司や仲間になら言えます。例えば「会社で一番△△のことに詳しくて仕事が速い○○さんのように自分もなりたい」ということも、すごいと思って憧れている相手以外に対してならば照れずに言えます。褒めた話はめぐりめぐって本人へ届きます。その言葉を聞いた時、直接的な褒め言葉よりも人を介した間接的な方が、受け手の「真実味が増す」と言われています(※4)。確かに、私も、人伝えに褒められたりすると、褒めた人とそれを伝えてくれた人の二人から認められたと言う気がして、喜びが倍増します。間接的に褒めるということは、褒めの効果を倍増させるのです。

褒めの裏ワザ

ここまで褒め方の基本について考えてきましたが、それでも、褒められない!という方ももちろんいると思います。そうした方のために、褒めずに褒める方法もお伝えします。

1. 聞くだけでいい?!

そもそも褒めるっていうことそのものが良くわからない、という方がいます。あるいは、褒め言葉なんて恥ずかしくて言えない、という方もいます。でも安心してください。そんな場合にもできる「褒め」があるのです。

相手の話をきちんと聞いて応答すると、相手はあなたのことを信頼すると共に、自分のことを認めてもらえたという自己肯定感を感じます(※5)。自己肯定感は、褒められた時に得られるといわれている効果のひとつですから、褒めなくても話しをきちんと聞くだけで同じ効果が得られるのです。ただし、聞き方が重要です。ろくに相手を見もしないで話しを聞いて上の空で返事をしたりしてはいけません。相手は話を聞いてもらえていないと感じて、むしろ不安を抱いてしまうからです。相手の目を見て、相手の言葉に耳を傾け、相槌をうちながら相手の話に共感をすれば、褒めた時と同じ効果が得られるのです。その際に感心したことや前向きな感想を伝えられると更に良いでしょう。相手は承認されたと一層強く感じるので、褒めの効果も倍増するからです。

2. 嘘でいい?!

職場の同僚が病気や怪我で入院したとき、あなたはその同僚に何と言いますか?

A:○○さんが居なくても、仕事は順調です。大丈夫ですからゆっくり養生してください。

B:○○さんが居ないと大変なんです。早く元気になって戻ってきてください。

おそらく、Bの方が嬉しいという方が多いのではないでしょうか。実際には、○○さんがいなくても仕事で支障は出ないかもしれません。しかし、本人が周囲から必要とされていると感じられるように、「いなくて大変だ」と嘘をつくのです。

世の中には、嘘も方便と言う言葉があります。嘘には、2種類あります。利他的な嘘と利己的な嘘です。相手を励ます効果がある嘘は、利他的な嘘です(※6)。相手が病気で弱っている時や落ち込んでいる時、頑張っている時は、相手が言われて嬉しいと感じることや励みになることを、とりあえず言いましょう。たとえ嘘でも、相手を励ますための嘘は褒め言葉と同じように相手の心へ届きます。

最後に

前回、今回と褒めることの効果と褒めるポイントについてコラムを書いてきました。書いている私自身も、褒めることはまだ上手ではありません。しかし、褒めることを意識したことで以前よりも相手に注目できるようになり、人との関わり方そのものが変わったように感じています。

褒めることは、『目的』ではありません。周囲とどのような関わり方をするかが大切なことです。良質なコメニュケーションを育む手段のひとつとして、褒めることを意識していただければ良いと思います。

注1:貝原益軒著・石川謙校訂『和俗童子訓』岩波新書、1961年。

注2:林成之『脳に悪い7つの習慣』幻冬舎新書、2009年。

注3:渋谷昌三『人の2倍ほめる本』新講社、2016年。

注4:吉田たかよし『脳が喜ぶ!ホメ上手!』コスミック出版、2011年。

注5:自己肯定感とは、自分のあり方を積極的に評価できる感情、自らの価値や存在意義を肯定する感情のこと。

注6:利他的な嘘とは、他人の利益のための嘘を意味する。

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