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CS調査、うまくいっていますか?ー調査票の限界とインタビュー調査のすすめ

マーケティング部
中村 舞衣子

■はじめに

「顧客満足度調査をしたが、調査結果がいまひとつピンとこない」

「あれだけ時間と労力をかけたわりには、核心に迫れない」

「こんな調査は役に立たないと、営業担当者からいつも言われる」

顧客満足度調査(以下、CS調査)を担当している人なら、一度は感じたことがある悩みではないでしょうか。

お客様の満足・不満足を把握する一般的な方法が、調査票を用いた調査です。多数のお客様に調査票を配布し、回答を定量的に集計・分析するものです。しかし、このやり方だけでは、冒頭に述べたような悩みが解消されることはありません。調査票による調査には限界があるからです。調査票による調査にはどのような問題があり、どうすれば解決出来るのでしょうか。クライアント企業に対するCS調査の経験、および社内のCS推進担当としての経験を踏まえ、みなさまに問いかけたいと思います。

■調査票の限界

1. 不満は述べてくれない

調査票による顧客満足度調査を定期的に実施している、あるクライアント企業から聞いた話です。その企業にはお得意様といえるお客様が何人かいました。そのうちの一人と、しばらく連絡が取れない時期があったそうです。ようやく会えて話をしたときには、他社に切り替えることを打ち明けられました。慌ててこれまでのCS調査の回答結果を確認したのですが、その調査票からは不満らしきことは何一つ読み取れませんでした。不満を抱いている人の多くは、わざわざその不満を記入することはありません。私も、釈然としない思いを抱えつつも黙ってその場を立ち去り、二度と利用しなかったことは何度もあります。釈然としないどころか、頭にきたにもかかわらず何も言わない人も中にはいます。そのような人を「サイレント・クレーマー」といいます。サイレント・クレーマーは直接企業にクレームを言わずに離れていくだけでなく、その企業の悪評を家族や友人、同僚に言いふらします。特に最近では、インターネットやSNSの発達で、企業の評判が瞬く間に広がります。たった一度の不満経験が、企業の信頼を揺らがすほどの大ごとになってしまうこともあるのです。調査票を配付したところで、「サイレント・クレーマー」の意見を拾い上げることはできないことを、認識しておかなければなりません。

2. 調査票による調査で分かるのは無味乾燥な数値だけ

ある訪問販売会社から聞いた話です。その企業では効率的な営業活動をするために、お客様の在宅時間を調査しました。結果は、「午前中」にチェックした人が圧倒的におおかったそうです。そこで午前中の訪問を増やしました。しかし、思うように会えませんでした。居留守を使われていたこともあるようでした。 調査結果の通り、午前中の在宅率は高かったのです。しかし同時に、午前中は家事等で忙しい人がほとんどでした。訪問販売の相手などする暇がなかったのです。調査結果を額面通りに受け止めると、思わぬ落とし穴にはまってしまうこともあるのです。

3. 選択肢が回答を狭めてしまう

例えば、「買い換えの理由は何ですか」という設問に対して、「故障したから」「上位品目だったから」「デザインが良かったから」などの選択肢が列挙されていたとします。本当は選択肢に載っていないことが大きな理由だったのですが、選択肢になかったために、目に付いた別の理由を選んでしまうことがあります。選択肢によって回答が狭められてしまうのです。もちろん、選択肢の中に答えがあることがほとんどです。事前調査をした上で選択肢を決めているからです。しかし、少数意見を無視するわけにはいきません、例えば、マンネリ化したCS施策から脱却しようとしているような場合には、少数意見こそにヒントが隠されているのです。

4. 基本的に調査票への回答は面倒くさい

家庭向けに家事用品の販売をしているある企業のCS調査をご支援させて頂いたときの話です。調査票の冒頭で「商品は満足していますか」と尋ねると、「やや不満である」と回答している人が少なからずいました。しかし、調査票の最後でより具体的な質問、例えば「商品を使っていて腰に負担がありませんか」「カートリッジの交換で不都合を感じたことありませんか」というような質問をいくつか列挙したところ、ほぼすべての質問に「満足している」と答えていたのです。

調査票をみた瞬間に、回答するのが面倒に思った経験はないでしょうか。あるいは、回答の途中でやめてしまった経験はありませんか。調査票の記入は相当の時間を割かなければならず、負担になるのです。前述の事例では、調査票が進むにつれて、回答が面倒に感じてしまったのでしょう。この、相手にとって負担を認識しておかなければなりません。

■インタビュー調査による補完

こうした問題がある中で、お客様の満足・不満足の要因を抽出するためにはどうしたらよいでしょうか。解決方法の1つとして、インタビュー調査による補完をお勧めします。ここでは、一般的なインタビュー調査はなく、調査票の補完という位置づけに限定して説明します(注1)。

■調査票による調査とインタビュー調査の違い

まず、調査票による調査とインタビュー調査の違いについて説明します。調査票による調査では、顕在化している満足・不満足要因を中心に数値化して測定します。通常30分程度で回答してもうことが多いと思います。これに対して、インタビュー調査では、お客様の態度や行動に加え、まだ表に出てきていない心理や意識までも探ります。時間は、通常1時間程度かけて話してもらいます。(図表1)

図表1 調査票による調査とインタビュー調査の比較
調査票による調査 インタビュー調査
対象領域 態度や行動が中心(すでに表出していること) 態度、行動に加え心理や意識を探る(まだ表出していないことも含む)
回答方法 調査票に挙げられている選択肢の中から選ぶ、自由回答もある 質問に対して口頭で自由にこたえる
時間 20,30分 1時間程度
分析方法 統計学的分析(平均値、優位差、分散など) 構造的に整理した上で、議論をしながら読み解く
報告書の表現 数値と図表 文書と発言記録(時に写真も含む)
種類 郵送調査、留め置き式調査、インターネット調査 フォーカス・グループ・インタビュー、パーソナル(デプス)・インタビュー

<インタビュー調査の対象>

調査対象者は、調査結果を左右するので慎重に選ぶ必要があります。必ずしも全体の意見を正しく理解していなくても、特定領域のことに強い関心がある人を選ぶことが重要です。

法人企業であれば、失注した取引先にもインタビューする価値があります。自社の問題点を生々しく語っていただくことができれば、次に向けてのヒントになるからです。余談になりますが、調査票にて不満を訴えているお客様がいた場合は、インタビュー調査とは別に、すぐに訪問しなければなりません。

<インタビュー調査の内容>

「事前予想と調査結果のかい離が大きかったところ」や「満足・不満足の原因が思い浮かばなかったところ」について、その真因を探るための質問をします。主な質問は2,3つに留め、全体から掘り下げた質問になるように構成します。手分けしてイタンビューを行う場合は、インタビュワーによるばらつきをなくすために、インタビューガイドを用意するとよいでしょう。

<インタビュー調査の進め方>

拡大型質問をすることで、できるだけ自由に語ってもらいます。拡大型質問とは、選択肢を提示してどちらかを選択させる限定型質問とは異なり、「○○についてどう思われたのですか」「なぜそう思われたのですか」など自由に語ってもらう質問です。具体的に内容を確認していく際には、「これまでもこのような経験はありますか」「それはいつごろですか」など限定型質問を交えるとよいでしょう。その際、相手の身振りや声のトーンなど、視覚や聴覚からはいる情報も、理解を深める手助けになります。

さらに、安心して語ってもらうためには、雰囲気づくりも重要です。インタビュー開始前には、守秘義務を守ること、残したくないコメントは掲載しないこと、ボイスレコーダーを使用するのであれば議事録作成を目的のみに使うことを約束し、安全な場であることを認識してもらいます。

<インタビュー結果の活用>

インタビュー調査が終わったら、記録をまとめ、社内の関係者とぜひ情報共有を行ってください。過去の担当者や同じような経験がある人から問題解決のためのヒントを得られるからです。

法人企業であれば、営業担当者へインタビュー内容をフィードバックしてください。ただし、この際注意しなければならないのは、お客様の評価は担当営業者の活動だけで評価しているわけではないということです。営業担当者個人として取り組む問題と、会社として取り組む問題とを分けて伝えることが重要です。

■まとめ

私はある日突然CS調査担当を任命されました。始めは手探りでしたが、実施回数を重ねていくうちに、帳票による調査の限界を感じるようになりました。調査票による調査を否定しているわけではありません。相手に行動を起こしてもらうための背景情報が少なすぎると感じたのです。そこでインタビュー調査を取り入れたところ、CS検討会議での議論の深みが増しました。営業担当者からは、自分の知らないお客様の一面を知ることができたと感謝されました。皆さまの会社でも是非インタビュー調査を取り入れてみてください。

注1: 帳票による調査の前にインタビュー調査をすることもあります。調査票を設計するための事前調査のためです。ただし、ここでは事後のインタビュー調査に限定して説明します。

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