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不確実性の高い未来に向かって成果を出す

グローバルビジネス推進グループラーニングデザイナー、ミラーハイマンプログラム認定講師小林惠子

■「グローバル」というあいまい性

「グローバル化」「グローバル人材」など、「グローバル○○」というカタカナが氾濫しています。市場に国境がなくなっている、海外企業との厳しい競争を勝ち抜く必要がある、だからこれからは「グローバル人材」を必死に育成しないといけない。そのような文脈でもよく語られています。一見もっともらしく聞こえますが、本当にそうでしょうか。漠然とした、そして抽象的な「グローバル人材」というモノを目指せば、解決できるのでしょうか?

 「グローバル」とは、文字通り「地球的な」という意味があります。しかし、インターナショナルという英語には「国際的な」という用語が広く定着しているのに対して、あえて日本語にせずカタカナで使ってきた背景に、実は今までとは違うあいまい性を含んだ様々な文脈があるように思えます。

ここで私が皆さまに伝えたいことは、正しい言葉の使い方でも、妥当な回答を出すことでもありません。ただ、世界のビジネスのとらえ方は多様になってきており、何が正しいということではなく、その多様な側面をしっかり認識してほしいということです。そして不確実性の高い環境で、リーダーとして、バランスを取りながら組織を成長させていくための、一つの考え方をお伝えしたいと思います。

■2つの世界のとらえ方

グローバルという言葉で示唆される意味の1つは、統合や統一あるいは標準化です。国や地域ごとに異なった 仕様や仕組みを標準化し、どこでもだれでも使えるようにすることを目指す考え方です。これはグローバリゼーションやグローバルスタンダードという言葉に表わされています。例えば、世界中にチェーン展開する高級リゾートホテルからファーストフード業界まで、どこでもほぼ同じサービスが受けられるのは、こうした仕組みや仕様を統一したからです。また、自社の海外支店や、経営統合した他国の企業とは、ビジネスの基幹システム、人事制度や育成などのしくみの統一、そしてそれを円滑に進めるためのIT環境の統一が進められてきました。このように、グローバリゼーションは便利で安心安全な環境を創り出すのに大きく貢献しています。

 これとは別の捉え方もあります。世界は多様で異質なものの存在に溢れているので、統一するのではなく、「共存させる」「組み合わせる」あるいは新しく「つくりだす」べきだという考え方です。それぞれの良さを活用しようという価値観が土台にあります。例えば、コンテンツ産業のような独自の味わいが求められる業界のみならず、衣食住産業では嗜好にあった新素材を取り入れる動きがあり、あるいはIT企業と旅行会社と地方自治体が組んだ「独自の旅のメディア」という取り組みも見られます。多様性を活用していく事例は、身近でも増えてきています。これを受けて、組織内部においては、多様で異質な人たちを受け入れて、彼らの知恵や異なった強みを活用していこうという動きが見られます。ダイバーシティ&インクルージョンという言葉も、よく耳にするようになりました。

単純化すると、次のような図が描けます。

図_ 二つの世界の捉え方

図_二つの世界の捉え方

“統合して世界で同じ仕組みをもたらしていく”という文脈と、“多様で異質なものの共生を目指す”という文脈は、ある意味対極に位置づけられており、このままだと対立することになります。注意すべきことは、統一か多様性かという二項対立では意味がないということです。上記の二つの円は、独立して存在するのではなく共存しうるものです。世界をとらえ直す一つの切り口であり、議論の出発点に過ぎません。

“異なったしくみを一つに統合する”という画一化の考え方は、ビジネスの生産性や効率化を促進するため、多くの企業で採用されてきました。結果として広い領域で利便性を生み出し、言語や文化を超えてサービスを行きわたらせることができました。しかし一方で、はみ出した異質性、多様性、多文化性が収まり切れずにあふれ出てしまい、現場で不協和音が出ていることも事実です。

今後は、多様な人たちが異なる視座から知恵を出し合い、協働していくことが、今まで以上に必要になってくるのではないでしょうか。

■多様な世界で異能を活用できる力

「今、日本は、失敗を恐れず探求する、大いなる可能性があるICT技術課題への挑戦者-異能(Inno)な人を探しています」― これは、総務省が2014年から始めている、“変な人募集”のキャッチフレーズです。これも一つの新しい流れではないでしょうか。

また、昨年5月にイタリアで開催されたミラノ万博の日本のテーマは「食」でした。日本館は大変な人気パビリオンで話題になりました。無形文化遺産に登録された日本食が、世界にさらにその美味さ、強さ、美しさを発信された機会であったことでしょう。興味深いことに、コンセプトは「共存する多様性」でした。万博といえば、どちらかというと最新のテクノロジーを披露しあう場であったように思います。それが、未来の共存を考えていく問いの形になっていることに、私は今さらですが時代の流れを感じました。

こうした最近の流れを見ると、前述したような「統合」の流れを受け入れつつも、世界を異なる視座でとらえ直し、不確実性の高い一貫性のない世界でも異質性を活かして成果を出せることが、ますます重要になってくるのではと考えています。同時に、常に「発見し」柔軟に「対応する」という臨機応変さやそのような思考や感覚、ふるまいがこれからのリーダーに求められるようになるでしょう。

そうであれば、これからは学び方にも新しい方法を取り入れる必要があります。次回のコラムでは、未来に向かって成果を出し続ける人になるための、学び方のとらえ直しをしたいと思います。

(2016.03.24)

著者プロフィール

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小林惠子
株式会社 富士ゼロックス総合教育研究所 研究開発&コンサルティング部 グローバルビジネス推進グループ ラーニングデザイナー、ミラーハイマンプログラム認定講師

国際協力分野専門の総合的なシンクタンク、および精密機器メーカー勤務を経て2000年入社。主にグローバルアカウントセールスとして外資系企業の営業力強化、M&A後の組織づくり、次世代リーダーの育成などの支援に携わる。また、海外パートナーと協働して国境・文化・言語を越えたグローバルビジネスの開拓を行い、日本企業のビジネス課題を外から見る視点を養う。現在はパートナービジネス強化のため、新しいソリューションの日本展開を推進する役割を担う。

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