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リーダーシップとは「自分がどう生きるか」自分は探すものではなくつくられるもの

株式会社ココナラ様インタビュー

株式会社ココナラ 代表取締役社長 南 章行 株式会社ココナラ
代表取締役社長 南 章行

1999年に慶応義塾大学経済学部を卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。支店勤務後、運輸・外食業界のアナリストとして業界分析などに従事。2004年に企業買収ファンドのアドバンテッジパートナーズに入社。投資先企業の役員としての経営改善活動や、良好な投資リターンの実現に貢献。2009年に英国オックスフォード大学経営大学院(MBA)を修了。オックスフォード在学中に現地で出会った「音楽を使った若者向け社会起業プログラム」を実施するBlastbeatの日本法人である「特定非営利活動法人ブラストビート」の設立を主導(現在は理事として参加)したほか、オックスフォードの同級生が設立した「特定非営利活動法人二枚目の名刺」にも理事として参加するなど、個人の自立・自律をサポートする活動に積極的に参加。東日本大震災をきっかけに2011年にアドバンテッジパートナーズを退社。創業準備ののち、2012年に自ら代表として株式会社ウェルセルフ(現株式会社ココナラ)を設立。

自分の経験で人が喜ぶその喜びをビジネスにした

小串 ココナラさんはエネルギーに満ちた若い方が多い会社ですね。本日は、今の若い人たちが仕事で力をフルに発揮していく秘訣をお聞きしたいと思っています。まずは社名の由来と、どのような思いで起業されたのかをお話しいただけますか。

ココナラという社名には「ここならできる」「ここなら聞ける」という、「ほかにはない」という思いを込めています。ココナラは、モノではなく知識や経験に基づいたスキルやサービスを売る側と、自分にはないスキルを買う側のマッチングサイトを運営していますが、「誰かのスキルが買えたら便利」というよりも、「自分の得意なことで誰かの役に立てたら素晴らしいな」という、売る側の思いから出発しています。

小串 起業までにはどのようなご経験を積んでこられましたか。

それまで銀行に5年間、企業買収ファンドに7年半と、ずっと金融業界にいて、2008~09年にオックスフォード大学のMBAに留学しました。しかし留学中にリーマンショックがおき、世界経済が厳しい状況になりました。また、僕はいわゆるロスジェネ世代で、周りを見ても仕事を通じて生き生きしている人が少なく、同世代がとてもしんどそうだとも感じていました。
そういう閉塞感の中で、この先、少子高齢化が進んでいく中ではさらに若い世代がもっと大変になるという問題意識を抱き、自分で自分の幸せを定義し、それを自分の力でつかみ取れる若者を育てなくてはいけないのではないか、という気持ちになったのです。それで帰国後、NPOをつくりました。
はじめにつくったNPO法人「ブラストビート」では高校生・大学生向けの社会教育プログラムを提供しました。活動を通じて子供たちが元気になったのも嬉しかったですが、それ以上に、ボランティアで携わっている大人たちも元気になったことが大きな発見でした。会社の外で自分にできることで社会貢献し、その成果が人の笑顔になって返ってくる。そういう経験は人を元気にし、自信につながる。そう気づき、そのような場をもっと増やしたいと2つ目のNPOをつくりました。
それが、本業とは別に二枚目の名刺を持ち、社会貢献に資する活動をしようというNPO法人「二枚目の名刺」です。一流のビジネスパーソンがチームを組んでNPOを支援するもので、やはり関わった皆が元気になるのを目の当たりにしました。会社の中にいるだけだと、自分が誰の何の役に立っているのかわかりにくく、なぜ働いているかという感覚が希薄になりがちです。それに対して、自分の経験を生かすことで人に喜んでもらえる活動は、人間の根源の欲求 を満たしてくれるということを発見したのです。

小串 自分が誰かのために役に立つ喜びは、いくつになっても、誰にとっても同じ、人間の本質に関わる喜びですね。

そうなんです。しかも、どんな人でもその人ならではの経験が絶対あります。だからそれを可視化できれば、どんな人でも自分に価値があると思えるようになり、皆ハッピーに生きられるのではないか。ココナラのビジネスはそんな思いから発想しました。
人の幸せとは、自分が“機能”していると思えることではないでしょうか。対家族、対友達、対社会、なんでもよいのですが、自分という存在が何らかの意味をもって機能している状態が大切だと思っています。

小串 職場では、若い人たちがそのように仕事の意義を見出し、自己を生き生きと投入できるよう、会社が背中を押してあげることが必要かもしれません。

昭和の時代は、働く理由はそれほどいりませんでしたが、今はそうではないですからね。たとえばかつては、自動車メーカーに入社したら車をつくればよかった。車がどんどん生産されれば国民はハッピーだし、会社はどんどん成長するし、自分は昇進昇給し、国も税収が潤う。そういう社会では自分がなぜ働き、何をするべきなのかを考える必要がありません。
でも、今は未来に向かって何をするべきかということすら誰も教えてくれません。そのようなとき、暮らすためのお金だけ稼げればいいというのでは、あまりにも生きるのが大変でしょう。だから今は、一人ひとりにとって働く理由が必要になっていると思います。

小串 やるべきことを誰も示してくれず、働く理由は個人が働きながら見つけていくしかないような時代には、個人が起点にならなくてはなりません。それは一人ひとりにとって非常に厳しい時代であると同時に、自分で可能性を広げていける時代ともいえますね。

変化の速い時代には「今」「ここ」に集中する

株式会社ココナラ 代表取締役社長 南 章行 株式会社ココナラ
代表取締役社長 南 章行

小串 金融から出発してさまざまな経験を積んでこられた中で、ご自身の仕事観がガラッと変わった瞬間がどこかにあったのでしょうか。

転機はいくつかありました。まず、銀行という安定した会社を辞めて、日本で最初の企業買収ファンドに転職したこと。半数が1〜2年で辞めていく完全な実力主義のところに飛び込んだため、非常にチャレンジングな状態でした。それからオックスフォードのMBAに行き、世界中のさまざまな価値観に触れたこと。そして、帰国してNPOを始めたこと。この活動で人脈もスキルも広がり、また新しい価値観を手に入れました。それぞれとても大きな転機で、これらがあったから起業に踏み切れたと思います。

小串 そういった流れは、ご自身が綿密に計画をしてつくられたのですか。それとも、自然につながっていったのですか。

何も計画していませんでした。とはいえ、僕は若い頃はとにかく計画的に、常に2〜3歩先を読んで物事を進めていくタイプでした。たとえば高校生のときは、どこの大学に行くかを決めるために世の中の仕事を可能な限り調べ、その結果、自分には商社が向いている、しかも社風的にあの会社が自分に合っていると決め、そこから逆算して大学の学部を決めたぐらいなんです。実際は銀行に就職しましたが、就職活動で語った通りのキャリアプランで進みました。
しかし、ファンドに転職した頃から、未来の予測はできないという気持ちになってきました。インターネットも普及してきて、世の中の変化のスピードが非常に速くなり、これからの時代、数年後を予測して生きることはマイナスの方が多いと思えてきたのです。そこで自分に「2年以上の計画は立てない」とルールを課しました。

小串 ずいぶん極端から極端に振れたのですね。その理由を、もう少し具体的にお聞きしたいです。

まず、「◯◯を目指す」と言うと、もしそれ以外のところに可能性を感じたとしても、自分を押し殺してしまうからです。変化が速い時代には「あれ、こっちかも」という直観は大切なのに、当初の計画に固執して時代の流れからずれていくとしたら、とても危険です。一貫性の罠に陥るのは避けなくてはいけないということです。
それから、中長期の計画を立てると、大体の人はインプットから始めるからです。1年目は修行時代でセミナーや本で勉強し、その成果を2〜3年目で出していこうと計画するわけですね。しかし、その間に世の中も自分の興味も変化するので、計画を変えたくなります。するとまたインプットから始める。それが繰り返され、10年経っても常に1年目のまま、という状況に陥りかねません。
変化の速い時代にはインプットだけの時間はいりません。計画は最長でも2年とし、それ以上先のことは考えず、今ここに集中して成果を出す方がよいでしょう。30歳をすぎた頃から、そのようなマインドで生きていかなければと確信するようになりました。

本気でやれば道は自分の中から湧き上がる

小串 見えない将来をあれこれ考えている暇があったら、まず自分で動いてみよう。そう考えるようになったのは、やはり社会が大きく変わったからですか。

そうですね。それからもう一つ、自分のキャリアは社会を予測して立てるものではないという発想に至ったこともあります。
僕は銀行時代もファンド時代も必死で働いてきました。30歳前後は気力体力が充実していて上昇志向も強い時期ですが、そのときに体力の限界まで本気で取り組むと、対象に対して、「これはすごく好き」「ここは何かが違う、嫌だ」など、愛情や憎しみが生まれてくると気づきました。そのような感情が生まれると、「だとしたら次はこっちだ」と、内発的に進む道が発見できます。僕がMBAに行ったのも、まさに内発的なキャリア志向からでした。

小串 次はMBAだという感覚は、どのような状況で得られたのでしょうか。

ファンドで働いていれば、本来はわざわざMBAにいく必要はありません。しかし、必死に働いている中で経営者として自分に足りないものが明確になり、それを補うのにMBAはいい機会かもしれないと思ったのです。
経営とは「意思決定」だと言われますね。論理的に答えが出せることは、論理的に考えれば誰でも同じ答えが出せるので、それは経営者の仕事ではありません。経営者の仕事は論理的に答えが出せないこと、価値観や心情で決めるしかないことを決め、腹を括ることです。経営とは確かにそのような意思の力で決めること=意思決定だと、僕は仕事の中で発見しました。
でも、僕は論理的に決められないことについて、決めることができませんでした。自分には軸がない、価値観で決めざるを得ない状況において拠って立つものが何もないと痛感し、では、どうしたら価値観を身につけられるのかと方法を考えていたときに、MBAかもしれないと直感したのです。MBAでは正解のわからない中で答えを出していくケーススタディを多量にこなすので、それを通して自分の中に原理原則や価値観がじわっと形づくられるのではないか、それこそがMBAの財産なのではないか。そう感じてMBAに行くことを決めました。

小串 MBAでは求めていた学びが得られたのでしょうか。

当時、MBAといえば資本主義の悪い面を生み出す場だというような見方もされていた時代でしたが、オックスフォードのMBAでは、利益を最大化するにしても、「誰のための利益か」が常に議論されていました。企業買収の仕事は尊敬されると思っていたら、「金の悪魔」と言われてショックでしたね。つまり、オックスフォードのMBAは、自分たちが環境に恵まれた以上は社会をよくする責任があるという「ノブレス・オブリージュ」の校風から、MBAでも最高のビジネステクニックを学んで社会をよくすることを目的としていたのです。
アフリカで人道支援をやっているような人も、何人も来ていました。資本主義のトップとグローバルなNGOで活躍している人がぶつかり合うその1年間で、僕の仕事観はガラッと変わり、自分の軸ができてきました。
大きな学びの一つは、「論理は感情に勝てない」ということです。人の感情を逆なでしたら、どれだけ論理的でも、それより先にはいけない。MBAは極めて論理的な世界ですが、究極的には人の感情が大事なのだという価値観が生まれたことは大きかったです。

小串 非常に厳しい修羅場があり、その中で論理的なプロセスを踏んできたからこそ、感情や感受性の重要性が見えてこられたのかもしれませんね。

リーダーシップとは「自分がどう生きるか」

株式会社富士ゼロックス総合教育研究所 代表取締役社長 小串 記代 株式会社富士ゼロックス総合教育研究所
代表取締役社長 小串 記代

小串 大勢の若い世代を身近で見ておられる南さんは、若い人たちが自分の力をフルに発揮できるようになる秘訣、リーダーシップを育てていく秘訣はどんなことだと思われますか。

学生レベルや社会人1〜2年目の段階で自分のやりたいことが見つかっている人はほとんどいませんし、自分探しをしても自分など見つかりません。自分は探すものではなくつくられるものだからです。自分をつくる行動の積み重ねで自分のキャリアは決まっていきますし、自分の幸せが何であるかも定義されていくと思います。
先ほど「本気で取り組めば愛か憎しみが生まれてくる」と言いましたが、その感覚を何度か味わうことで、自分の進む道が内側から見えてきます。しかし、仕事だけではなく、趣味でもなんでも同じですが、中途半端にやっていては何も生まれてはこないものです。
20歳代前半は仕事を教わりながら経験を積み、スキルを伸ばしていく時期です。20歳代後半にはある程度仕事を任されるようになりますが、この時期は、思うように仕事ができずに苦しみ、もがく時期。そして30歳くらいになったとき、そこまで本気でやってきた人には進むべき方向が見えてきます。だから僕は、興味があるもの、本気になれるものがあったら、それがたとえ仕事ではなく趣味やNPOであっても、躊躇なく突っ込めばいいと思っています。もちろん、目の前の仕事でもいい。本気でやれば道は開けてきます。
そのようなプロセスを繰り返し、積み重ねていくことで、自分はどう生きるかという問いについて一定の解が見えてくるでしょう。それはリーダーシップがつくられていくプロセスであるとも思います。

小串 リーダーシップは「自分がどう生きるか」を問い、解を出していく中でつくられていく。若手に自分で問い、解を出す経験をしてもらうためには、最初は会社側が問いを立てる必要があるかもしれませんね。

リーダーシップのある状態というのは、自己実現欲求と、社会をどうしたいかという社会実現欲求が明確で、「自分はこう生きる」と旗を立てられる状態だと思います。その二つがうまく揃うと、よいリーダーになれるでしょう。もちろん、皆がポジションとしてのリーダーになる必要はなく、重要なのは、自分自身が人生に対してリーダーシップをもって生きていけること。そのようなリーダーシップは、本気で自分で何かを決め、その結果が自分に返ってきて、「成功した」あるいは「失敗だった」と思い、「次はこうしよう」と考えることの繰り返しで磨かれていきます。だから若手も、その問いを立て、結果が自分に直接フィードバックされてくる経験をどれだけ重ねられるかで育っていくと思います。

小串 最近の人材開発では、若い人が自ら決めたことを行っていく場をどうつくるのかを重視しています。若い人にも本気でチャレンジしてもらうには、組織側も腹を括らなくてはいけないのだと感じます。

今の世の中の問題は、答えがわからないか、答えはわかっていてもしがらみがあったり問題が複雑すぎたりして誰も解決できないかの、どちらかだと思うのです。これを解決するのはどっちもリーダーシップですね。前者はいったん「これで行こう」と決めるしかありませんし、後者を解決するのもしがらみなどを突き抜ける力なので、「大変でも、これは絶対やらなくてはいけない」という強い信念の力が必要です。少しでもリーダーシップをもっている人が多い会社が、今の時代は強いのではないでしょうか。

小串 世の中が複雑になり、すぐに答えが見えない問題が多くなっている時代では、若い世代にも、自分で問い、自分で考え物事を進めていく力をつけてもらう必要があります。上司から常に問いがぶつけられるような環境の中で、若手はリーダーとして育っていくのですね。

問いを立てること自体、それまで好奇心旺盛に生きてきていないと、実は難しいことですよね。いろいろなものを知ろうとし、これはどうなっているんだろうと自分で考えてきたから、何かが起きたときに問いを立て、さてどうしようかと考えられる。それにはやはり、自分が少しでも本気になれるところには突っ込んでいき、疑問を感じる経験を積み重ねることしかないと思います。

上司がリーダーシップを磨けば自然と部下にも伝わっていく

小串 リーダーシップをもった人をどう育てていくかということに、多くの企業が悩んでいます。最後にぜひ、育成する立場の方々へのメッセージをお願いします。

繰り返しになりますが、一人ひとりが自分の人生の幸せを定義でき、そこで頑張れている状態、仕事でも「自分はこう生きたい、こう判断したい」という価値観をもてている状態が、リーダーシップをもっている状態だと思います。もっと言えば、幸せとは何かということを、少なくとも自分については自分の言葉で語れる人が究極のリーダーといえるでしょう。
しかし、そのようなリーダーシップを言葉で教えられるかどうかはわかりません。そこで次世代のリーダーを育てる立場の方々には、「あなたがリーダーシップをもてていますか?」と問いたいと思います。人生100年と考えると、50歳でもまだ折返し地点にすぎません。部下のリーダーシップを育成したいのなら、まず自分が新しいことにチャレンジしてリーダーシップを磨いてください。上司が生き生きと生きていれば、そのあり方は伝播し、部下はその背中から勝手に学んでいくでしょう。
自分を成長させられる人であれば他人を成長させられるかもしれませんが、自分を成長させられない人が他人を成長させることなど、僕はできるとは思えません。上の立場の方々も、自分を心地よく頑張らせることのできる場所を見つけ、新しいスキルやネットワークを身につけて、新しいチャレンジを続けてほしいと思います。

小串 どのような立場になっても、常に自分の枠を広げ、成長させていくことが重要ですね。南社長のお話から、「人が主体的に成長する」ために背中を見せる大切さを改めて考えさせられました。私たち自身が自分の生き方、価値観をはっきりさせ、変化に好奇心を持って自己の成長にチャレンジし続ける姿が一番の刺激になりますね。本日はどうも有難うございました。

インタビューを終えて

南さんと代表小串の画像

「自分の得意なことで誰かの役に立てたら素晴らしい。人の幸せとは、自分が機能していると思えること」そんな発想から生まれたココナラのビジネスは、多くの人の人生を豊かにしています。南社長ご自身が辿ってきたリーダーへの道のりは、絵巻物のような展開です。「今」「ここ」に全力を尽くし考え抜くことで、仕事、人生の意味を探求する連続であったように感じます。南社長の本質をえぐる言葉の力と内から湧きあがるエネルギーで、「今、ここを必死で生きているか」と、私たち本誌関係者一同にフックをかけていただいた気がします。インタビューの中では、本気で、必死でという言葉を何度となく聞きました。人は艱難辛苦を乗り越える過程で自分をみつめ、働く意味や目的を自分なりに意味化していく力があるものだと、あらためて考えさせられました。南社長の背中を見ていたら、目の前にどのような障害があっても、自分の思い(Will)と不屈の精神(Grit)で道が開けると思えてきます。

株式会社富士ゼロックス総合教育研究所
代表取締役社長 小串 記代

取材日:2018年5月
広報誌xchange136号より

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