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当たり前を見つめ直すことから生まれた成功モデル 来るべき新製品に向け未来への基盤を作り上げる

富士フイルムファーマ株式会社さま営業革新事例

富士フイルムファーマ株式会社さま

富士フイルムグループは1936年の「X線フイルム」の発売以来、世界に先駆け「診断」に関わる製品を医療分野へ展開。2006年には生活習慣の改善に寄与する「予防」分野へビジネスを拡大し、2008年の富山化学工業の連結子会社化を皮切りに医薬品・再生医療分野への積極的な投資を行い「治療」分野の事業基盤を強化。人々の健康に関わる「予防」「診断」「治療」の分野をカバーする総合ヘルスケアーカンパニーを目指す。富士フイルムファーマは2009年設立。当初は、ジェネリック医薬品の開発・販売からスタートし、2012年より糖尿病薬・感染症薬の販売、2015年より抗肥満薬の製造販売・ヒト成長ホルモン製剤の販売へと業容を拡大。将来、富士フイルムグループが開発する新薬販売の役割を担う。

「当たり前」と感じることを揃える

富士フイルム医薬品事業部を経て2015年代表取締役社長に就任

代表取締役 社長
井上 章

井上 富士フイルムファーマが立ち上がった当初、営業の仕組みと言えるものはほとんどありませんでした。数十社から集まったMR(Medical Representative:医療情報担当者)は、それぞれ経験してきた環境や仕事のやり方が異なるため、各人が「普通」や「当たり前」と考える内容がそもそも違いました。まったくのゼロからのスタートだったといえます。
当初はジェネリック医薬品(後発品)の販売を行っていましたが、2012年に大手製薬会社から先発薬の販売を引き継ぎました。当社のMR数は圧倒的に少なく、恥ずかしながらシェアを増やすどころかじわじわと下がっていく状況で、対策を講じようにも問題・課題が山積みでした。
そんな状況を打開するため富士ゼロックス総合教育研究所の徳久さん(当時、富士フイルムホールディングスに出向中)にお願いし、営業変革のプロジェクトが始まりました。

当時、富士ゼロックス総合教育研究所から富士フイルムホールディングスに出向

徳久 大手製薬会社から先発薬を引き継いだ約半年後の2013年から営業変革のプロジェクトが始まりました。プロジェクト開始当初は、営業の仕組みややり方を変えることに抵抗感が強かったことを覚えています。各MRは、出身会社の仕事のやり方をそのまま続けていたため営業のやり方や用語もばらばらで、MR活動の共有化や施策の検討を行うチーム会議もあまり行われていませんでした。MRごとの業績の差異も少なく戦略のもととなる成功パターンも見出せなかったため、まずはターゲティング~計画立案~実行・支援~振り返りといった営業としての基本的な仕事の進め方(PDCA)を標準化し、4~5名のチーム内で活動を検討、共有化するということから始めました。プロジェクト名はA:あたりまえのことを B:バカみたいに C:ちゃんとやるの頭文字をとって“ABC大作戦”に決まりました。

MR・営業推進部で現場と本社スタッフの双方の立場を経験

営業本部 営業推進部 営業推進グループ グループリーダー
飯田 浩之

飯田 MRは単に薬を販売するだけではありません。ドクターとその先の患者様のメリットに繋がる情報の提供、収集をする上で、信頼関係の構築が欠かせません。各MRが行っている営業活動のプロセスが細分化・標準化されたことで、活動の進捗状況に応じた課題が明確になり、他のMRの成功・失敗事例も自身のMR活動のヒントとなりました。

徳久 営業活動の進め方を標準化し、現場の皆さんがしつこくPDCAを実践された結果、高い業績を上げる営業所やMRが出るようになりました。そこで、高業績を上げたMRの方々に具体的な活動内容や工夫をインタビューした結果、共通の成功パターンが見えてきました。
そこで整理した成功パターンから当初やや抽象的であった戦略内容を具体的な戦略としてまとめ横展開していきました。
ABC大作戦を始めてから2年ほど経過し、ある程度基本的な営業活動が定着してきましたが活動内容と実績との連動、施設に関するタイムリーな情報収集、チーム会議の効果・効率の向上などが課題となっていました。そこで当時、医療情報部の阿部さんが検討されていたiPadを活用する営業支援システムでこれらの課題を達成できないかと一緒に検討を進めることになりました。

自然と成功モデルを真似できるシステム化を目指す

iPadを活用した営業支援システムの開発を担当

営業本部 学術企画部 ( 当時 医療情報部) 課長補佐
阿部 優子

阿部 従来の営業支援システムは、現場MRが必要とする大抵のデータが出力可能なシステムではあったのですが、多機能と引き換えに利用方法は難しく、また手間もかかるシステムでした。
そこで、現場が欲しい情報を欲しい時に入手できるようシステムを再構築することになったのですが、当初はまだ具体的なシステムの形は見えていませんでした。ただし、現場に利用を強要しなければ使われないシステムではなく、現場が自ら欲しい、利用したいと思ってくれるシステムにしたいという気持ちだけは最初からずっと持ち続けていました。
現場が欲しいと思ってくれるシステムを開発するためには、現場を知らなければなりません。徳久さんに相談したところ、タイミング良くABC大作戦を発展させていく上で共通の課題を検討されていたため、そこから一緒に現場ヒアリングを重ね、システム設計を進めていきました。現場ニーズを叶えるためにはシステムの内部構造を大きく作り変える必要があり、開発は思った以上に大規模なものになったのですが、徳久さんにはどのような見せ方が現場で活用されやすいかなど、主に画面設計の面で貴重なアドバイスを多数いただきました。新システムは無事に2015年12月にリリースでき、従来は半分以下だった毎日の利用率が、おかげさまで80%以上まで上がりました。

ABC大作戦の効果

本社スタッフの責任者としてABC大作戦を推進

営業本部 営業推進部 部長
片山 真希雄

片山 大手製薬会社からの販売移管直後、製品のシェアが後退していましたが、ABC大作戦で着実な成果をあげ、圧倒的に少ないMR数ながらシェアを取り戻すことができました。
はじめはMRに新たな作業を付加することになったため、確かに抵抗感もありました。しかし、皆が活動をはじめると、営業推進部から提供できるデータの質も上がり、現場から必要とされる情報が出せるようになりました。
ABC大作戦のおかげで共通言語ができ、MR同士のコミュニケーションがストレスなく行えるようになったのはとても大きいと思っています。営業活動のプロセスも全国で標準化できたため、急に転勤になったとしてもすぐ営業活動に入れるような状態にできました。
次に投入される新製品でもさらに進化した形でABC大作戦を実行することが計画されています。今までにはできなかった新しいチャレンジがはじまっています。

ABC大作戦の評価と今後の期待

井上 ABC大作戦によって、施設ごとに戦略を立て、実行し、結果を報告し、うまく行ったモデルを共有するという仕事のやり方と進め方を共通化することができました。もともと一匹狼が多いMRを同じモノサシや言葉で議論できるようになったため、お互いの理解も深まり様々な施策を検討するスピードも上がりました。
共通の仕事の進め方や言葉が定着したので、次は人のABC大作戦に取り組みたいと考えています。人のABC大作戦とは、人ごとに戦略を立て、指導し、結果を確認して、共有する仕組みです。「このMRにはどんな指導をしたほうが良い。」「あのMRの成功パターンはこちらのMRで活用できる。」そんな指導結果をリアルタイムで確認できる。今後、そういう人材育成の仕組みにレベルアップしていきたいと考えています。

飯田 徳久さんは、積極的に支店への訪問・会議への参加を行っていましたので、現場の声をもっともよく知っています。現場の意見を俯瞰してみているから、非常に説得力があります。今回作り上げた仕組みは、来るべき新薬が出たときのターゲティングでこそ真価を発揮するのではないかと思います。

阿部 徳久さんとの活動を通じて分かってきていることは、優秀な成績を上げているMRには類似した行動パターンがあるということです。施設ごと、ドクターごとの動きをよく理解し、ベストタイム・ペストプレイスで活動をしています。次は、ベストタイム・ベストプレイスの追求を支援できるよう、システムを進化させていきたいと考えています。

片山 徳久さんから成績の良いMRの活動状況をシステム上で共有してもらうことで、他のMRの刺激になり士気が高まったと思います。MRに新しい行動の習慣が根付いたように、今後はマネージャーが各MRの活動をタイムリーに確認しながら指導・育成していく環境作りに努めてまいります。

井上 なにより徳久さんは全国を飛び回り、会議の場に足しげく通っていただきました。私が自社の作戦を練る際に重要な現場の現状認識が、徳久さんと一致していると非常に安心しました。そのくらい、現場のことを深く知ってくれています。営業を変革していくという大仕事を上から目線ではなく、同じ歩調で歩んでいただけたことに本当に感謝しています。

現場の声

何もないところから始まったABC大作戦

営業本部 南関東支店 支店長
登山 仁之

担当した各営業所で前年同期比130%および全国販売ランキング1・2位を達成

登山 富士フイルムファーマ自体が新しい会社ということもあり、営業のための仕組みが何もないところからのスタートでした。ターゲットとする製品のシェアはわずか数パーセントで、黙っていても売れる状況ではありませんでした。非常に厳しい環境の中、マネージャーの立場としては残りのシェアの開拓余地は十分にあるという気概でABC大作戦をスタートしました。

徳久 ABC大作戦がスタートした当時は決まった帳票もなく、会議もなるべくせずに、現場を回ることを優先する雰囲気でしたので、戦略を実行する体制を築くことが難しいと感じていました。まずは、MRごとに最重要施設を3施設定め、活動計画を立て、月2回の会議で活動を共有するところからスタートしました。
活動内容を共有する帳票は現場からの意見を吸収しながら作り上げていきました。なるべく記入負荷を少なくなるようにしながらも重要な情報が共有できるように帳票を一緒に作り上げていきました。個々のMRの活動が会議の中で共有され、成功事例が集まってくると、ある特定の診療科に一定の需要があることが分かってきました。今まで重点施設に入れていなかった施設についても特定の診療科を中心に攻めるという観点から見直し、特定診療科のローラー作戦が始まりました。

登山 特定診療科へのローラー作戦がはじまったころからABC大作戦の成果が出そうだという気配が出てきました。予算達成を考慮すると重点施設の数は3施設では足りないため、20 ~ 30施設に拡大し営業活動のPDCAを回していきました。重点施設を攻略するためのD to D、D to Mなどの企画もあわせて実施し、結果として私が管轄する営業所は4期連続で全国トップの成績を収めることができました。

ABC大作戦を経験した印象

営業本部 南関東支店 神奈川第1営業所 課長補佐
鈴木 博貴

ABC大作戦の前後を経験

鈴木 重点施設に対しての活動計画を文字に起こすことでメンバー間の意見交換が的確にできるようになりました。活動内容を記録しているため、会議では進捗のあった部分だけを報告すればよくなり、無駄な時間がなくなりました。他の営業がうまくいったパターンや失敗したパターンから作戦を練り直すなど、ノウハウを共有できるようにもなりました。特定カテゴリーでの効果的な方法などの分析をしていけば、将来、新人MRの即戦力化につなげていける可能性もあるのではないかと思います。

営業本部 南関東支店 神奈川第2営業所 課長補佐
藤本 康夫

ローラー作戦をいち早く完遂

藤本 前職のMRでは帳票が細かすぎて記入に1日費やすこともありました。ABC大作戦で作られた帳票は非常にシンプルなため、記入に手間を取られず、営業活動に時間を費やすことができました。ローラー作戦ではいち早くアクションに着手し、他の営業に先駆けて担当エリアの特定診療科をすべて回りました。もちろん、すべてに成果が出たわけではありませんが、見極めるルールなどの発見もあり、有益な情報を他のMRと共有することができました。

営業本部 南関東支店 神奈川第1営業所
小池 東樹

前年同期比で売上200%を達成

小池 ABC大作戦が始まった後に外資系製薬会社から転職してきたのですが、帳票がコンパクトにまとまっていて、引き継ぎがわかりやすかったことを覚えています。当社では前職に比べて担当施設数はかなり増えたのですが、活動を報告する内容がシンプルであったため無理なく対応できました。特定の診療科を攻めるといった方針も明確に示されていたので迷いなく営業活動を推進できました。重要ターゲットごとに作戦を細かく練り上げ売上前年同期比で200%達成でき、全社に活動成果報告できました。

同じベクトルで営業現場を歩く

徳久 徳久さんもはじめて来たときはまだまだMRについて詳しいわけではありませんでしたが、足しげく現場に通い、会議にも参加してくれ、一緒に営業の基礎を作り上げてくれました。支店での成果を企業全体としても広げてくれ、最終的に全社として前年同期比15%~ 20%UPの良い成績を収めることができました。同じベクトルを向いて歩んでもらえるのが本当にありがたかったと感じています。

登山 特に、東京・神奈川の営業所の成績は良く、常に全国をリードしていました。狙った戦略を先駆けて実施し、積極的に検証していただきました。全国の指針になる成功例をたくさん生み出し高業績チーム/MRのインタビューにも協力いただきました。本当にありがとうございました。

iPadシステム
医薬品情報だけでなく、個人や営業所、施設ごとの実績、担当施設への活動状況などが確認できる。
重点施設活動シート
施設の現状、活動計画、活動結果など営業(MR)活動のPDCAを定期的にチーム内で確認、共有する。

インタビュー後記

ABC大作戦は富士フイルムファーマがジェネリック医薬品の販売会社から将来の新薬販売を担う会社へ変革するためのプロジェクトの一つでもありました。営業変革を実現するためには、営業(MR)一人ひとりのスキルアップだけでは難しいと感じたため、企業独自の(1)組織文化を基にした(2)戦略、(3)組織・人、(4)プロセス、(5)仕組みの全体システムを変革していこうと考えました。今回のプロジェクトでは、まず始めに基本的な仕事の進め方(プロセス)の型をチーム単位で着実に実践し(組織・人)、創出された成功事例をパターン化した上で具体的な戦略として全社展開を行い(戦略)、戦略を遂行する上で必要な情報をタイムリーに閲覧できるシステムを構築しました(仕組み)。このように全体システムを変えていくためには、目的達成に向けた部門間の連携が必要になります。しかし、多くの場合、営業企画・推進部門や人事・教育部門などがこのような役割を担うには、部門の利害関係や本社と現場の壁が障害になります。各部門・機能を連携させ、全体システムを一貫性を持たせながら変革に導いていくために現場と本社、各部門を調整し、連携させていく役割として客観的な第三者の活用も有効な選択肢の一つではないかと改めて感じました。

富士ゼロックス総合教育研究所
徳久 収

Profile:1986年 富士ゼロックス入社。営業、マーケティング、人事企画を経験後、富士ゼロックス総合教育研究所に移籍。2012年~2016年 富士フイルムホールディングスに出向し、富士フイルムファーマの営業力強化を担当。大手企業を中心に組織変革、人事改革、営業力強化などのプロジェクトを多数手掛ける。英国国立ウェールズ大学経営大学院(MBA)修了。

取材日:2016年11月

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