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「変わる」だけでなく「超えていく」企業へ 長期的な視野で、全方位的にグローバル市場にチャレンジ

NTTコミュニケーションズ株式会社さまインタビュー

NTTコミュニケーションズ株式会社
代表取締役社長 庄司 哲也

東京大学経済学部卒業。1977年に電電公社入社後、秋田県大曲電報電話局に赴任。1980年より2年間アメリカ、ニューヨーク大学に留学しMBAを取得。1991年、東西統一後のドイツで現地法人を設立し副社長を務める。1993年、信越支社に着任。2001年、NTTビジネスアソシエを設立。退職再雇用制度導入や年金改革などNTTグループの構造改革に着手する。2004年、障害者雇用促進法に定める特例子会社、NTTクラルティを設立。2005年、NTT西日本に着任、人事部長を勤める。2012年、NTTコミュニケーションズ副社長に就任。2015年6月より現職。趣味は、モータースポーツやラグビー、野球などのスポーツ観戦。なかでも、自らも若い頃ステアリングを握っていたモータースポーツ好き。

これまでのグローバル展開

小串 NTTコミュニケーションズは近年、グローバルにおけるビジネスを加速させておられます。これまでの経緯をお聞かせいただけますか。

庄司 NTTグループはこれまでいくつかの変遷を経ています。もとは電電公社だったのが1985年に民営化されてNTTになり、1999年には持株連結経営に移行、持株会社のもとにNTT東西とNTTコミュニケーションズが誕生しました。地域通信網やユニバーサルサービスを担うNTT東西は法規制がかかる会社ですが、長距離通信、国際通信等を担う我々NTTコミュニケーションズは、ITの世界でかなり自由にサービスを提供できる会社としてスタートし、爾来、グローバル市場への挑戦をしてきました。
当社は約5年ごとに新しいビジョンを提示しています。「ビジョン2015」を発表した2011年当時は、企業が多国籍化し、また経済そのものがグローバル化を急速に進めていました。そして国内市場が安定期に入ったこともあり、日系企業の多くは海外に市場を求めようと考えていました。「ビジョン2015」で我々は、そのような企業の動きに基づいた戦略を打ち出しました。
例えば、アジア等に進出していくお客さまからは、展開先やM&Aでできたフットプリント同士、そして日本とを結ぶ通信・ITインフラに関して、なかなか日本並みの通信品質を保てないという悩みをお聞きしていたのです。それであれば我々がお手伝いして、現地でも高い品質で日本を含む拠点間が結ばれる通信環境を提供しよう。我々はそれを基本方針に据えました。
加えてその頃には、クラウド技術の進展により、お客さまがサーバーや通信機器を物理的に用意しなくても、我々のクラウドサービスをご利用いただけるようになっていました。ただ、その時点では、クラウドサービスの基盤やお客さまのサーバーを格納するデータセンターの規模が、海外のあらゆる市場に対応できるほどではなかったのも事実です。そこで、2015年までにさまざまなM&Aを行って不足するピースを埋め、提供能力を強化していったのです。その結果、2015年度のグローバル事業の売上は、2010年度に比べ約2.4倍にまで拡大することができました。
準備は整いました。グローバル事業規模を更に拡大するべく、「ビジョン2015」の基本コンセプトをさらに進めたのが、この春に発表した「ビジョン2020」です。

「ビジョン2020」で目指すこと

小串 「ビジョン2020」では、具体的にどのような戦略を描かれたのでしょうか。

庄司 全方位的な品揃え、シームレスなICT技術でグローバルへの挑戦を行う、という方向性を示しました。弊社の強みを3軸で表した以下の図を用いてご説明しましょう(図)。

図 NTTグループのグローバルビジネスにおける強み
NTTコミュニケーションズ株式会社
代表取締役社長 庄司 哲也

庄司 1軸目は「フルスタック」です。ネットワークやデータセンターというインフラを我々は持っていますが、そのインフラ上にマネージドICTをのせ、さらにアプリケーションやソリューションを提供することで、マネジメントや運用を含めてお客さまから我々にフルアウトソースして頂くことを可能としています。
2軸目は「フルライフサイクル」です。サービスをご利用いただく、あるいは導入をご検討いただく際に、アドバイザリーサービス(コンサルテーション)から入り、その後は移行サービスも請け負いますし、サービス構築後には運用・マネジメントもお任せいただけます。このように当社は、ライフサイクル全体を通じてITサービスを提供する体制を整えています。
3軸目は「フットプリントの拡大」です。これまで日系企業の進出先であるアジアを中心に展開してきましたが、近年M&Aによって欧米にもグループ企業が増え、現在は世界各地でフルスタックでの提供能力を確保することができました。この3軸それぞれを伸ばしていこうというコンセプトで取り組んでいきます。

小串 ここまでワンストップで提供できる企業は、ICTの世界ではなかなかないのではないでしょうか。

庄司 そうだと思います。我々は海外進出を行う日系企業に対し、ITプラットフォームをフルスタックで提供し、お客さまのビジネスをサポートする体制をつくっていくことで、たとえ国内市場の成長がこれ以上大きく見込めなくとも、グローバルから収益を上げられるだろうと考えています。もちろんそれには物理的な提供能力が必要ですので、先にもお話しした通り、M&Aによって不足分を埋めていったわけです。
現在、当社は世界各地に140拠点以上の高品質なデータセンターを展開しています。ビッグデータの扱いがますます重要になってくるなか、通信事業者としての提供能力を活かし、データセンター間を非常にセキュアなかたちでつなぐことで、お客さまにデータやシステムを安全・柔軟にご利用いただくことができます。グローバル展開にあたっては、お客さまが世界のどこに進出しても、確実にインフラ・レイヤーを提供できるという戦略で進めていきます。
もう一つ、NTTグループ全体としてはシステムインテグレータやアプリケーションを提供する兄弟企業の存在がありますので、彼らと組んでクロスセルも進めていきます。

長期的な関係性を重視したM&A

小串 多様な企業を買収しながらグローバル展開を進めてきた中でのご苦労や、グローバル展開を進める際の秘訣をお聞かせください。

庄司 これまで海外ビジネスを長く行ってきて、一朝一夕に成果は上がらないということを学んできました。たとえば、持株連結経営となって海外進出を始めた当時、クラウドサービスの初期コンセプトともいえるビジネスモデルで事業を行っている北米のある企業を買収しました。ITバブルの影響もあり、かなりの負債を抱えることになりましたが、現地には技術者もマネジメント人材もかなり送り込んでいたので、北米市場とはどういうものか、マネジメントスタイルは日本とどう違うかなどといったことを、社員は経験的に身につけることができたのです。そこで“授業料”を払ったことが、2010年以降のグローバル展開の成功につながったと考えています。
また、M&A先の企業には、創業者をはじめ、その企業やビジネスについて熟知している人材がいます。そのような方々に残っていただき、その力を我々のサービスと化学反応させてポジティブなパフォーマンスを生み出す、ということを大切に考えています。そのためM&Aにあたっては、経営者同士の志向のベクトルや波長が合うことを重視しています。幸い、その点では当社はよく同調できていると思います。
ただ、いずれはお互いに世代交代の時期が訪れます。次世代への継承は経営上の重要な課題ですから、企業の継承・継続性に関しても彼らと一緒にサクセッションプランも含めて計画を策定し、必要な人材育成も行うなど、次のステージに進む準備を始めています。

小串 共通の価値観をもつ相手と、長期的に関係性を存続させていくことを、非常に重視されているのですね。

庄司 我々はインフラ・レイヤーが得意だということもあり、つくったものが20~30年単位で継続して使われることを前提に考えています。現在拡張を続けている海底ケーブルも、一度敷設すれば30年は使いますし、当然、30年後も事業が継続しているという前提でつくっているわけです。
我々がM&Aを行うのも、単に目の前の利益や市場を短期的に獲得するためではありません。ある事業目標を、長期タームでともに達成していこうという意識のある企業を仲間にすること、それにより継続性を担保していくことを大切に考えています。

「変わり、超える」を目指して

小串 「ビジョン2020」に合わせて「Transform. Transcend.」というコーポレートスローガンを定められましたが、「変える、超える」というこの言葉に込めた思いをお聞かせいただけますか。

庄司 我々には、デジタルトランスフォーメーションを推進していくICTプレーヤーであるという自負があります。「Transform.」には、社会やお客さまのビジネスを変革していくということだけではなく、我々自身も変わっていかなくてはいけないという意味を込めました。
そして「Transcend.」には、これまでの枠組みをもっと超えていかなくてはならない、という思いを込めました。国内市場だけに留まっていないという姿勢もそうですが、現在は特に、通信テクノロジー自体が電話を中心とした世界とは異なるクラウドの世界に入っていますし、社会もお客さまも、それを前提として考えるようになっています。その中では、我々自身が従来の技術や枠組みを超えていかなくてはいけない、さらには社会やお客さまの想像を超えるものを打ち出していく、ということです。
我々はこれまでも変わり続けてきました。しかし、なおいっそうの変革をし、超えていこう。そのような飛躍的進化への思いを、お客さまにも社員にも訴えたかったのです。

小串 現在、御社の中で海外ビジネスに携わっている人は、どのぐらいいらっしゃるのですか。

庄司 買収した企業を含めると、もはや社員の三分の一以上が日本国籍ではありません。

小串 そんなに多国籍化が進んでいるのですね。グローバルで共通のマネジメントルールは定めているのでしょうか。

庄司 例えば、世界共通の行動規範を用意しています。「我々はお客さまに対して何を提供しているのかを常に考えよう。それはグローバルでのシームレスなICTサービスであり、しかも先進的サービスとして評価されるものでなくてはならない」というような内容のものです。こういった行動規範と、「Transform. Transcend.」というスローガンをグループ会社共通のコンセプトとして共有しています。これをどう分解するかは各社の判断に任せていますが、共通のビジョンに向かっていくということは、皆、認識しています。

株式会社富士ゼロックス総合教育研究所
代表取締役社長 小串 記代

小串 どの国にあっても、立ち戻る基盤は「ビジョン2020」であり、「Transform. Transcend.」という言葉だということですね。変革を掲げる企業はあっても、「超える」ことを共通価値に入れている企業は、これまで拝見した記憶がありません。次の世代に向けての、とても深いメッセージになっていると思います。

庄司 「Transcend.」には、自分の限界をつくらないでボーダーを超えてほしいということと、変革していく中では今までの枠組みを超える事態も当然出てくる、という意味も含んでいます。たとえば、「傘下に入ったディメンションデータのメンバーとクロスセールス部隊を構築しよう」とか「NTTデータが買収したデルシステムズとIoTを構築していこう」など、仕事を進める中では自分たちの帰属も変わっていくこともあるでしょう。そのようなボーダーを超えること自体が次へのチャレンジになり、それは喜びにもつながるのだ、というメッセージも込めたつもりです。
もう一つ、男女や人種、宗教など、多様な属性の方々がいますが、そういう違いを超えて共通の目標に向かっていこうという、ダイバーシティ的な世界観も含めています。

リーダーの資質

小串 世界各国の多様な社員を牽引していくお立場として、次のリーダーに期待することや、リーダーとして大切に思っていることをお聞かせいただけますか。

庄司 リーダーに求められる要件はいくつかありますが、まず、企業の継続性、持続的成長を前提に考えられること。特に我々のようにインフラサービスを提供している企業にとっては、自分の世代だけがよければよいのではなく、次の世代が過ごす社会が、そして自社の社員・家族が幸せになるようにリードしていく必要があると考えています。次の世代の人に「あのときのトップがこういう仕事をしてくれたから、今、自分たちはこういう事業ができる」と思ってもらえるような経営判断、舵取りをしていくことが大切でしょう。
我々が今つくっているものはその頃には古くなって、レガシーとなってしまうわけですが、リーダーは、それが新しいことにチャレンジするための礎となるような、そんなポジティブスパイラルを生み出せるものを残していかなくてはいけません。それを残せる人こそ、リーダーとしてふさわしいと思います。
また、その行動が皆を明るくしていけるものであることも、リーダーの資質の一つだと思います。企業が合理化や効率化を進めるのは当然としても、ときには苦痛を伴うのも事実です。将来、「結果としてこういうベネフィットがあったからやってよかった」といえるものにしなくてはいけませんし、その過程も出来れば楽しんでできるようにしていくことが大切です。
私の好きな言葉に、論語からとった「知好楽」があります。物事を単に知ってやる人よりも、それを好きになってやっている人の方がよいパフォ-マンスにつながるし、やりがいも生まれる。さらに楽しんでやれるようになるともっとよい、というようなことを表す言葉です。仕事も同じで、言われたことをこなすだけでも仕事にはなるかもしれませんが、「Fun to work」の心境で臨めるようになれば、もっと成果も上がり、付加価値も高まるでしょう。

チャレンジそのものを楽しむ

小串 楽しむことでフロー状態に入ると、極限的に高い集中力が発揮され、ますますパフォーマンスが上がるといいますね。アスリートもそうであるとよく聞きます。ただ、仕事にしてもスポーツにしても、実際には必ずしも楽しめることばかりではありません。

庄司 もちろん、快適なばかりではありません。私の座右の銘は、F1の名ドライバー、マリオ・アンドレッティの「If everything seems under control, you’re not going fast enough.(もしすべてがうまくコントロールされているように見えるなら、まだスピードが足りないということだ)」という言葉です。コントロールされた世界は快適で、つい安住してしまいがちです。しかし、セーフティゾーンにいるだけでは、革新的なものはなかなか生まれてきません。失敗しても、あるいはリスクを冒してでも、ある閾値を超える必要があるのです。私自身、快適だ、安定していると感じているときには、これは自分が怠けているからではないだろうかと、この言葉に立ち戻って自戒しています。

小串 自分はチャレンジをしているかと自問するわけですね。

庄司 はい、リスクを伴う状態で厳しく物事に臨むのは、快適性を損なうことでもあります。しかし、そこにチャレンジしなくていけませんし、挑戦すること自体を楽しいと思うぐらいでなければいけないと思うのです。
マリオ・アンドレッティはレーサーなので、レース中に体重の2倍、3倍の重力がかかる中で、限界のスピードでこのカーブを曲がり切りたいと思うか、少し落としたスピードで無難にコーナリングした方がいいのか、という状況に常に直面していました。しかも、その中で冷静な判断をすることが求められるわけです。しかし、たとえ過酷であっても、アスリートにとっては限界に挑戦すること自体が楽しいことであるし、アスリートである以上はハイリスクでもコントロールされていない世界に挑戦しなくてはいけません。彼の言葉には、そのような意味が込められています。

小串 コントロールされていない厳しい世界で、ビジネスにおいて挑戦を続けていくためには、どのようなことが必要だとお考えですか。

庄司 基礎体力も経験値も必要だと思います。経験値は、チャレンジし、ときに失敗もしながら積み上げていくものです。
また、先日、脳科学者の方と話をしたとき、サッカーのスーパープレーヤーであるネイマール選手は、画像認識や直観力を司る右脳がとても発達していると聞きました。ネイマールは自分以外の敵味方を含めた21人の選手の位置や動きを認識し、たとえば自分にパスが来たとき、瞬時に自分がドリブルで突破するか、ほかの選手にパスをするかなどの選択肢がいくつも頭に浮かび、最適だと思われるアクションを選んでいるというのです。同じプロの選手であっても、瞬時にそこまでの総合的な判断ができる人は少ないそうです。スーパーアスリートは身体能力が優れているのはもちろんですが、そのように脳も使っている。そして、そのような瞬時の適切な判断は、脳が楽しさを感じている状態でなければできないということです。

小串 高いパフォーマンスを上げるためには、やはりチャレンジそのものを楽しめるようになる必要がありますね。最後に、グローバル化をはじめとする社会の変革の中で、悩み、模索を続けている経営者の方々にメッセージをお願いします。

庄司 当社は2016年7月、F1レーシングチームのマクラーレン・ホンダとテクノロジー・パートナーシップ契約を締結しましたが、当時マクラーレン・グループCEOだったロン・デニス氏が「2位というのは敗者の1位である。しかし、挑戦し続ける限りは敗者ではない。」と言っていたのが印象的でした。つまり、諦めてしまった瞬間に敗者になるということです。
我々は短期的にではなく長期的によかれと思うこと、もっといえば次世代によかれと思われる判断や資産形成をしていきたいと考えています。そのためにはやはり、諦めないでやり続けることが重要ですし、実際、長く続けることで成功につながった経験もあります。皆さんもぜひ、諦めないで粘り強くやり続けてください。

小串 ビジネスのグローバル展開は簡単ではありませんが、長期的なビジョンのもと、継続性を重視して粘り強く、そして楽しんで挑戦することで成果は出てくるということですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

インタビューを終えて

加速度的に進化するデジタル技術と共にICTプレーヤーとして世界的なブランド力構築に取り組まれている庄司社長のお話は、私たち人間の挑戦心と継続性がよりよい社会を創るという力強いメッセージであった。経営インフラとしてのICTサービスが、お客さま企業の新しいビジネス展開を創り、つながりの社会が進んでいく未来図が見えたようだった。柔剛併せ持つバランスと懐の深さ、限界への挑戦を喜びにするポジティブなマインド、負荷を楽しむ心意気、終止笑顔でソフトに語ってくださった庄司社長の周囲を引き込み前向きにするパワーが印象的だった。公私認める車好きと伺ったが、スピードに伴う加速・加圧感覚を楽しむことは、ビジネスでも変化という圧がチャレンジ精神を湧きあがらせ、立ち向かうパワーの源泉になっていらっしゃるように感じた。

株式会社富士ゼロックス総合教育研究所
代表取締役社長 小串 記代

取材日:2016年11月
広報誌xchange133号より

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